27.

 思えば小さい頃から漠然と、当然のように、“これからもずっと光穂と一緒にいるのだろう”と思っていたような気がする。

 僕は彼女を初めは友達として、次第に異性としてずっと好きだった。

 そしてもちろん彼女も僕のことが好きなんだろう。

はっきりと答えを聞いたこともないのに、心の奥底でそう自惚れていた。


 僕のためにコーヒーを淹れてくれて、テレビを眺めている僕にカップを差し出す光穂。

ありがとう、と言うと、僕が大好きな笑顔を見せて隣にそっと座る。

僕たちはそっとお互いの手を重ね、絡ませ、見つめ合い、唇を重ねる……。

 ここで素敵な時間に幕が下りた。

 夢のような時間は実際に夢の時間だった。


 翌日、夢はまた同じ展開だった。

ただひとつ違ったのは終わり方だけ。

 唇が重なりそうになった瞬間、光穂は絡み合っていた手をいとも簡単に解き、くるりと振り返ってそのまま向こうへ歩き出した。

その進む先には、手を広げて彼女を迎え入れる清也の姿があった。

僕の伸ばす手には目もくれず、光穂はそのまま清也に腕を引かれて遠ざかっていく……。


「みつほッ!」


 空に手を伸ばした行き場のない自分の腕が視界に飛び込んできた。

そのまま腕をしばし彷徨わせてから、僕はその腕で前髪をかき上げた。

 昨日の頷く光穂の姿が脳裏に浮かぶ。

顔を赤らめて瞳を潤わせた表情は、皮肉なことに僕の欲求を刺激した。

 あのときの答えはもうわかりきっていた。

今彼女の目には僕ではなく、清也が写っている。

せめてそんな彼女を振り向かせたくて、自分を意識させたくて、告白した。

 玉砕する気でした、初めての告白。

好きだと発した瞬間、やっぱり言わなければよかったと後悔してしまったのも事実だ。

 なにも良いことなんて起こらない。

そんなの僕がいちばんわかってる。

 あえて僕はあの日彼女を応援してやらなかった。少しの意地悪だ。


 今思うと、昨日今日と続けて見た夢の中で僕は耳が聞こえていたし、光穂は目が見えていた。

 それが僕の“夢”なのだろうか。

そんな夢を見てしまった自分が悲しかった。

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