あじさい

雨が長いと体が重くなる

人は街に戻ってきた


こちらを向いて


犬の散歩の人、

小さな赤ちゃんもベビーカーで

足を出している


みんなが閉じこもってしまい、

顔の見えないマスクの下で

曇った顔をしていた


表情のない

うつろなまなざしに

不安だけが膨れ上がっていた


あじさいががくに

色を付け始めて、

街にも色が少し戻り始めた


マスクにも色や柄があるように、

花は色を濃くする


あじさいは赤く、そして紫

蒼い色で空を仰ぐ


ほら、見て。

見上げてごらん、雲の隙間から青空がのぞいている

水滴を乗せたまま

あじさいは天に手を伸ばす


病に倒れた人はもうそれを見ることはできないか?

ううん、そんなことはないよ


きっとその青空の向こうから

雲の切れ間から

こちらを見ている

きっと

みんなが笑顔になることを

誰よりも待ち望んでいるはずだ


空を横切る燕も、

あじさいも、

何も知らないだろうが

私たちは

これからも

向き合っていこう


できるだろ、

今は会えなくても

心のそこか、ここか、

片隅にいつもある思いさえあれば。


また、あなたと愛し合える日が来る。

そう信じて。

私はあなたを待つ

これからも、ずっと。

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