外はすっかり暗くなり、街灯がちらほらと灯り始める頃、真希と棗は仲良く肩を並べて歩いていた。

「ねえ、真希ちゃん」

 呼ばれて真希が顔を上げると、真っ直ぐに前を向いて歩く棗の横顔が目に入った。

 どことなく真剣な、思いつめたような横顔だ。

「真希ちゃんってさ、ぶっちゃけ俺のことどう思ってる?」

 なぜかちっともこちらを見ようとしない棗を不審に思いつつ、真希は特に考えることもなく、思ったことをそのままサラリと口にする。

「もちろん、好きですよ」

 その瞬間、突然ピタッと足を止めた棗に合わせて真希も立ち止まると、ようやく視線が交わった。

「それってさ、どういう好き?例えば、菜穂とか、学校の友達とかを好きっていうのと、同じ?」

 その問いの意味がわからず、真希は困ったような顔で首を傾げる。

「好きっていうのは、種類があるものなんですか?それとも、好きの度合い、という意味でしょうか」

 確かに、とても仲のいい友人と、会えば話はするけれどそれほど仲良しとも言えない友人とでは、前者の方が好きの度合いは大きい。

 同じ好きではあるけれど、同列には語れない好きでもある。

 そういうことかと真希が問えば、今度は棗が困ったような顔で首を傾げた。

「うーん……ちょっと違うんだよな。まあ、度合い、と言えなくもないけど、でもやっぱりニュアンス的にちょっと違う」

「ニュアンスですか」

 やっぱりよくわからなくて、真希も棗と一緒になって首を傾げる。

 しばらく二人で向き合って首を傾げていると、不意に棗がポツリと

「上手く説明できないけど、俺の中では、明確に違うんだよ」

 言い終えたところで手を伸ばした棗は、そっと真希の肩に手を乗せて、優しくも強い力で引き寄せた。

 いつもの挨拶のハグと同じように、真希は棗の腕の中にすっぽりと納まる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る