低予算B級ホラー映画の空気感を文章で再現してしまった怪作

 ある日を境に突然人類に牙を向くようになったダイコンと、それを駆逐せんと戦う人間たちの物語。
 タイトルからも明らかな通り、昔のB級モンスターパニック映画のパロディです。あるいは(というか個人的な印象としては)、形態模写というのが近いかもしれません。
 といっても自分は元ネタを見ていないばかりか、B級ホラーについてもほとんど知識がなく、そんな人間があれこれ言うのもおかしいのですが、それでも「わからされて」しまうこの説得力。元ネタあるいはB級ホラーに抱いていた漠然としたイメージ、それがそのままぴったり重なるかのような、絶妙な間の外し方が癖になります。
 全体を通じて伝わってくる、まるで肌を刺すかのようなこのチープさ。いや「チープさ」という要素をして「肌を刺す」なんて書く日が来るなんて正直思いもしませんでしたが、とにかく徹底されています。
 このお話、一呼吸おいてあらすじやストーリーだけ考えてみると、実は結構ちゃんとしていると思うんです。少なくとも起承転結や盛り上げどころなど、その辺は全くサボってない。にも関わらず、という、この「なのにどうして」感、それがこのお話の肝なのだと思います。
 本来しっかりしているはずの型を、でも演出の力だけで崩してみせることの妙味。こればかりは言葉では説明できません。どうかその目で確かめてみてください。