第十八話 福岡にある・・タワーとドームの出来事

「おにいちゃん達は、きっと私の事を忘れてる」


くすん、くすんと泣きじゃくる

ドームの巨大な蝶のさなぎの糸に捕まってしまった


SFドラマのコスチュームを着た娘。

もう一人の寺崎ちゃん


「パパもママも、今、海外の子会社に出張

一番上のおにいちゃんは、休暇を取ってハワイでサーフィン

二番目のおにいちゃんも、休暇を取ってヨーロッパの美術館巡り


いつも面倒見てくれる、第二秘書の赤壁さんは失恋で、失踪中

執事の五丈原さんも、第一秘書のノノヤマ ユナも来ない」


ちょっと孤独を感じている寺崎ちゃんに

「がんばるんだあああ!!寺崎くん!我らファンクラブは君を見捨てはしない!!」


「みんなああ」涙を浮かべる寺崎ちゃん

そうだ、そうだと叫ぶ沢山の人々


それは騒ぎを聞きつけて、集まった人々(野次馬)やらTV局やらだった


消防士の皆さんは、どうやって助けるかと相談中


「私達も手伝わせてください!!」

と消防士に声をかける大工の集団


「樹高工務店の者です!!

丁度、福岡ドームの病んだ箇所の修理に呼ばれていたんです!!

何か出来ませんか?」 


「助かります!!

あのドームの球体のすべりやすい曲線部分に 被害者が引っかかているです

しかも この頑丈な『巨大さなぎの糸』から、助けださないと」


「では 我々が登って、バナーや電動ノコで、『糸』から被害者の娘さんを

助けだしましょう!!」


消防士達と大工集団のチームは、瞬く間に、『糸』を登り、

被害者の寺崎ちゃんを救い出す為、バナーや電動ノコで『糸』を斬り出した。


そんな時、小さな揺れが数回

慌てて、作業の手を止める。


「なんだ?」 メキメキとキノコ型の繭の中から

上の方から『糸』がちぎれはじめる。


『羽化』がはじまったのだ


羽は美しいるり色

午後の夕暮れ近くの光を浴び、その羽を金色に染める


まるで、巨大なドームが開いてその中から蝶が現れたかのような光景

その美しい情景に、人々は一瞬、我を忘れる。


福岡ドームのすぐ傍の海の波の音が聞こえる。


海からやってきた、美の女神ヴイーナス(アフロデイテ)

誰かがそっとつぶやく


ヴイーナスと呼ばれた、その巨大な瑠璃色の蝶は、

海風に吹かれその濡れたような羽を乾かして


光の中を

天空に向かって、飛んでいった。


※ここでちょっと、昆虫学者のパパがいる、ちほちゃんから一言

本来、朝方が蝶の羽化の時間です。 蝶の種類ですがアオスジアゲハか

ルリシジミと思われます


と・・昆虫に詳しい友人(ち◎さん)によると、羽が乾くのには30分かかるそうです

すみませんと作者


※タワーは福岡市の西の方にあり 海辺の近くです 

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