幾魔学地下都市の猛城セロは、斬殺探偵なのか。

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 密室殺人の起きた大豪邸の、とある部屋。

 あたしの相棒は、屋敷に集めた面々にこともなげにこう切り出した。


「まず、最初にお断りしておきますが、証拠はありません」


 当たり前だが、周囲から不平の声が聞かれる。

 刑事たちも不安というか、不満というか、いきなり現れたあたしの相棒に不信の目を向けている。

 当然だ。あたしだって、状況がサッパリ分からない。


「探偵小説でもない現実において絶対に確実である、ということは有り得ないということです。それはこの幾魔学都市において顕著です。

 例えば、瞬間移動できる魔術師が現れて殺して立ち去った、そんな可能性もゼロではない」


 それを言いだしたら、真相も何もないと思うんだけど。

 いや、前に有ったけどね。そういう事件。あれも解決したの、あたしと相棒だけど。


「あくまで俺から見えている範囲ですが……これが真実だと、俺は確信しています」


 事件現場どころか死体すら確認していない相棒は、理不尽に対しても背を向けない。

 ここは幾魔学地下都市。

 魔術と科学が入り乱れ、不条理と荒唐無稽が絡み合い、絶対は存在しない。

 ここは幾魔学地下都市。

 昨日のあたしたちは、こんな推理をするなんて思わず、教会の地下ダンジョンを探索していた。

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