第35話 バッカスオサダの冒険記

 俺の名は、オサダ。ベテラン冒険者で、武闘家だ。長く冒険者をやっているので、若い冒険者達の指導や、ギルドのリーダー的仕事も任されて、大忙しだ。本来なら、勇者カミヤが、ビシッとしきるところなのだが、あの人は、ああいう人なので、任せられないと、上層部の意見だ。俺も、正しいと思う。






 俺が、冒険者ギルドに顔を出すと、



「オサダさん、この依頼なんですけど」


「おうどれだ、ちょっと見せてみろ……」


「オサダさん、この魔物ってどう倒せば良いんですか?」


「そうだな。お前達のパーティーのメンバーだったらな……」


「オサダ君、この依頼なんだけど、君のチームに任せたいと思うんだけど」


「わかりました。さっそく行ってきます」




 と、なる。ザーマシティ冒険者が多い割に頼りになる冒険者が少ないんだよな。勇者カミヤはあれだし、勇者アオ達は、若い。賢者グレンはお見合いに夢中だし。マスターは、飲食店主だし、先生はザーマ神殿の神父だし。まあ、先生は人を生き返らさせるって奇跡を起こすから、あれだけど。人を生き返らさせるってできるのは、王都にいる聖女様と、先生ぐらいだ。






 俺は、パーティーを率いて魔物の異常発生地にやってきた。よし、やるか。



「おい、周辺住民の避難は、終わっているか!」


「はい、親方! 周辺住民の避難終わっております。家々も見回り、人がいないこともちゃんと確認しました!」


「よし! で、作戦だが」


「はいですボス。わたし達が周囲から追い立てて、ボスの必殺技で一網打尽です」


「よし! ではやるぞ!」


「押忍!」










「ありがとうございました。オサダ様達のおかげで村にも被害が出ることなく、解決しました。これは、少ないですが。お納め下さい」


 封筒を渡され開くと結構なお金が入っていた。



「我々は、ちゃんとギルドから依頼を受けて報酬を貰っています。その上こんなにもらうわけにはいきません」


「そうおっしゃらずに、わたし達の気持ちなので」


「うーん」


 俺は、お金の一部を取り出し、残りを返す。



「わかりました! パーティーの依頼成功の飲み代として頂いておきます。こんなには飲み代かからないので、残りは、村で使って下さい」


「わかりました。ありがとうございました」




 俺達は背を向けると帰るためにあるき出した。



「素晴らしいお方だ、オサダ様」


「ああ、強くて優しくて」


「ああいう方が、真の勇者だろうね」









「キャハハ、だから、わたしが〜」


「じゃねえよ、俺がうまくさ〜。ねえ、親方」


「ああ、そうだな」



 ザーマシティに帰ってきた。報酬成功の飲みをパーティーメンバーとしていた。だが、そろそろ行くか。俺にもプライベートは、必要だ。俺の楽しみ、キャットハウスで、1人しんみりと飲みたい。



「俺は、そろそろ行くぞ! 金は置いていくから飲んでくれ。だが、明日も仕事だ。飲み過ぎるなよ」


「はいです。ボス」


「お疲れ様です。親方」


「どこ行っちゃうのリーダー?」


「馬鹿! プライベートなことには触れるな! 親方もいろいろあるんだ」


「ふーん、じゃお疲れ様です。リーダー」


「ああ」










 俺は、キャットハウスの扉を開ける。中には、マスター1人。



「お疲れちゃん」


「おお、お疲れ様ですオサダさん。何飲まれます?」


「うーん、今日疲れたから、甘いものがいいな」


「珍しいですね。だったら、シークワーサーサワーが、さっぱりと少し甘いですよ」


「おおいいね。じゃビール頂戴!」


「またですか。いい加減やめてくださいよ」


「良いじゃん」



 俺は、1人ビールを傾けマスターと話す。うん、最高だ。

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