第3話 エルフは臭い?

 ある日のこと、わたしが仕事を終えキャットハウスに行くと。お客は、勇者カミヤだけだった。



「カミヤさん、お疲れ様」


「おお、先生、お疲れ様!」



 カミヤさんの声で、お店の壁が、少し震える。凄い大声だ。



「先生、何飲みます?」


「神の血ちょうだい」


「はい、わかりました」


「先生、神様の血液飲んでんの。だから、神の力が使えんのか!」


「カミヤさん、違いますよ。先生は、赤ワイン好きなんですよ」


「そっか、俺飲まないからな~」




 僕の前にグラスワインが置かれる。


「カミヤさん、乾杯!」


「先生、乾杯!」





 カミヤさんが、話を始めた。



「俺って、昔から、女にもてるんですよ」


 それはそうだろう、魔王を倒した勇者。女性がほっておくわけがない。


「良いですね。結婚はしなかったんですか?」


「いや~、先生。痛いとこつくね。俺。女運は、悪くて離婚してるんのよ」


「すみません、そうだったんですか。変な話しました」


「いや、良いんだよ。それで、それ以降は、女とは、遊びでしか付き合わないんだよ」


「ハハハ。カミヤさん、罪つくりな人ですね」


「しょうがないじゃん、先生、俺、もてるからさ。そう言えば、この間。久しぶりに、えーと、女の魔族サキュバスに誘われてさ」


「サキュバスに、誘われる?」


「ああ、先生、マスター、サキュバスに誘われたことない?」


「いや、無いですね~」


「僕は、一応聖職者なので、浄化したことはありますけど」



 サキュバス、女性の魔族で、男性の冒険者を誘惑して、まあ、いわゆる性行為をして、男性の生気を吸いとって殺す。神語の、愛人って意味のサキュバや、下に寝る者という意味の、サキュバールから、きていると言われている。因みに、男性の婬魔は、インキュバスと言う。



「もったいないな~。先生も寝てみなよ。あいつら良いよ。後腐れないし」


 下道な発言だな~。さすが勇者カミヤ。それに後腐れない? どういう意味だ?


「後腐れないってどういう意味ですか?」


「あいつら、誘ってきてさ、まあやるわな。そして、やりつづけてっと、突然消えちゃうの」


「はあ?」



 どういうことだ、勇者カミヤの生気を吸って、サキュバスは、どうなる?


わかったぞ。サキュバスは、勇者カミヤの生気が多過ぎて体が耐えられずに消滅しているのだろう。マスターを見ると、同じ事を考えたのか、軽く頷いていた。



「カミヤさん、凄いですね。サキュバス勇者カミヤの攻撃で、消滅しちゃったんですね」


「先生言い方、面白いですね」


「マスター、どういうこと? まあ、いいや。でも、いろいろな種族抱いてきた俺だけど、サキュバスは良かったぞ、そう、本当に天にも昇る心地よさというか」


「カミヤさん、そろそろ下品過ぎますから」


「ああ、ごめんね。マスター。で、あれだけは、駄目だな」


「カミヤさん、まだ続けるんですか?」


「エルフ、あいつらは駄目。あいつらは、臭いんだ」


 エルフ、森の民とも言われている。長命だが繁殖力はあまりないようで、森の奥でひっそりと暮らしている。だが、中には、都市に住んで、普通に交流をもっている者達もいる。そして、男性も、女性も本当に美しい。羨ましいぐらいに。



 そして、中には、そういう仕事につく者もいる。カミヤさんが良く行く、チェリーシティなんかは、そういう色町としても、有名だ。



「へー、エルフって臭いんですか」


「そうなんだよ、先生。本当に臭くてさ~。あいつら体洗わないんだよ。風呂も入っていないんじゃない」


「へー」



 と言った瞬間、店の扉が勢い良く開く。



「エルフが全員臭いわけではありませんのよ!」


 僕達が、振り返ると、そこにはキャットハウスにも良くくる。エルフのミドリーヌが立っていた。もう、若いと言える外見ではないが、顔は美しい。



 そして、ミドリーヌが入ってきた瞬間、きつい香水の香りが漂ってくる。僕と、マスター、勇者カミヤの声がはもる。



「エルフ臭い!」


「酷いですわ!」

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