第3話 ライディ

 他のステータスも軒並みGランクになってしまうので、違和感どころではないかもしれない…… 


 と、言う訳で、私のステータスはこうなりました。


【名 前】―

【種 族】― 【年 齢】― 【魂の質】G

【異 能】―

【筋 力】G(0/10)

【体 力】G(0/10)

【感 覚】G(0/10)

【敏 捷】G(0/10)

【耐久力】G(0/10)

【器用さ】G(0/10)

【知 力】G(0/10)

【精神力】G(0/10)

【EXP】0

固有技能ユニークスキル】不滅精神 無限転生

技 能スキル】言語理解:日本語Ⅲ 英語Ⅰ 算術Ⅲ 料理Ⅱ


(よしよし、【固有技能ユニークスキル】がしっかり私に発現したみたいだね。後は地道に成長していくしかないかな)


「神様、私の願いを聞いてくださってありがとうございました!」


『……はいぃ。しかし貴女にはぁ、これから幾多の困難、試練が待ち受けていることでしょうぅ』


(ステータスAll G だからね、最初はかなり苦労するだろうね……ん?)


 真っ暗な世界のどこからか、たくさんの黄金の光の粒が集まり、その1粒1粒が曲線を描き、川のように流れ、目の前に集束しはじめた。

 

 その光景は暗闇の中を飛び交う蛍の様な柔らかな光で、暗闇で強く存在を示しているにも関わらず、優しく、温かい、それでいて自然で……


「きれい……」


(この心の底から湧き出る温かい感情……感動、か。この光景をいつまでも眺めていたい。 でも、なんとなく分かるよ。これは神様が出てきてくれるエフェクトのようなものなのだろうなぁ)


 次第に光が収まっていき、毛先が少しカールした金髪、見るもの全てを魅了する様な優しい金眼の、袖なし白色ワンピースを着た美しい女性が佇んでいた。


(あれは……前の私よりも確実に大きい! でも、その胸の主張を妬む気持ちがまるで湧いてこない。目の前の女性のすべてが美しく、包容力の塊のようだ。例えるなら、全生物のママ、お母さん! やばい! やっばい! この溢れんばかりの圧倒的な包容力を醸し出す雰囲気! 私を貴女の娘にして下さ~い! お願いします! ……)


 私の思考が混乱していると美女(おそらく神様)が口を開いた。


「面と向かっては、初めてですね。初めまして、先ほど貴女とお話していた者です。」


 神様が優雅に礼をする。その動作1つ1つに気品がある中で、温かみが感じられる。


「は、はい! 初めまして、私は……? あれ? 名前が……」


 思わず首をひねってしまう。思い返せば、この空間にきてから私の名前について触れていない。そういえば、ステータス画面の【名 前】の欄も空欄だった。その事実に今更ながら恐怖を覚えてしまう。


(もしかして、元の私の【自分】とこの空間にきてからの【自分】は最初から違っていたの?)


「その心配はありません。貴女の元の名前は、貴女の元のからだについていたものだから、貴女の精神、魂に悪影響はないですよ。」


 その言葉を聞いて私は安堵し、ざわついた心が落ち着いていく。神様の言葉を全面的に信頼してしまうのもどうかと思うが、直感的に嘘ではないと思った。


「それはそうと、私が貴女の前に来た理由は、貴女に【名 前】を授けるためです。」


 神様が眩しい笑顔で両手をパンと軽くたたき、話を進める。


「え!? 神様が私の名付け親になってくれるの!? やったー!」


 一頻、喜んだ後に少し落ち着いたら、疑問が浮かぶ。


(神様がわざわざ私に、なぜ【名 前】を授けてくれるのかな?)


「【名 前】の無い魂は不安定で脆いので……【固有技能ユニークスキル】不滅精神 で魂のは避けることはできるのですが、魂が転生をうちに可能性があるからです。何か名前の希望とかはありますか?」


「うーん……曖昧ですけど、私に合いそうな名前でお願いします。」


「……わかりました。それでは、貴女は生きることに対して貪欲で身体よりも心、魂など精神的なものを重視する……貴女の【名 前】は—―― 


 ――――ライディ」


 神様し【名 前】を告げられた瞬間、私に変化が起きた。不定形だった私の精神体が、形を変えていき、胴体から手足が生え、最後に頭まで出来て、変化が終了した。


 私は完成した自分の精神体からだを見る。華奢でシミ一つない白い手足、それの対比したような漆黒の髪が肩を流れる。身体には神様と同じ様な袖なしワンピースを着ている。


(この空間では白色袖なしワンピースがデフォルトなのかな?)


 ワンピースの上から案外引き締まったお腹を手で触り、ついでに右手で髪をなでながら左手で胸も撫でてみる。


(あ……神様ほどではないけど、以前よりも、ある!)


 前の身体では、自他ともに認める断崖絶壁だったが、この精神体からだは大き過ぎず、それでいて小さ過ぎずの大きさ。


(素晴らしい! CからDカップ位あるのでは? 胸の膨らみは女性の魅力の一つ! これで私も勝ち組だー!)


 精神体からだの胸の大きさに狂喜乱舞しているライディだが、以前の身体では断崖絶壁だった為、胸が大きい人ならではの苦労をあまり知らない。走ると揺れて邪魔、肩がこる、月の物の時に張って痛い、男の視線がいやらしいなど聞いたことはあるが、「知るかボケッ!」と聞き流してきた。

 大体、女性は自分の魅力を引き立たせるために、苦労を惜しむような生き物ではない。朝、時間が無なくても必ず化粧はしていくし、外見上問題なくてもなぜかダイエットを続ける。つま先が痛かろうと、走り辛かろうとハイヒールを進んで履く。

 そんな生き物が多少のデメリットを貧乳わたしに伝えて慰めようとしても、その魅力を前にしては、単なる嫌味にしか聞こえない。いらないなら私に分けてほしいと思っていた。

 

 と、言うように以前のライディは胸の膨らみに対して少しコンプレックスを抱えていた。


 一頻喜んだあと、神様と目があった。とても微笑ましそうな目で特に何も言わず、佇んでいた。


「…………ッ~~~」


 ライディは現状を認識しだすと、次第に顔が熱くなっていくのを感じた。いい歳して人形や、ぬいぐるみに話かけていたのを母親に見られた時のような羞恥心に見舞われ、悶えた。


 今更だが、取り繕った態度をとり、ペコリと頭を下げる。


「神様、大変見苦しいところを、お見せしてしまい申し訳ありませんでした」

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