第38話 静かなる道程

一ノ瀬達は、敵に見つからないよう遥か上空から城に向かって急降下していた。着地に一抹の不安を懐いていたロゼッタ以外の四人は、ロゼッタにその作戦を改めて聞いていた。






「ロゼ!?まじで大丈夫なんだろうな!?全体の作戦を考えたのは俺だけど、お前の自信満々な城内潜入プランでちゃんと着地できるんだろうな!?」








一ノ瀬の言葉にアテナ達三人は視線をロゼッタに送るが、当の本人は、真下を見ながら険しい表情を浮かべていた。








「う~ん?このままいくと中庭への着地は厳しいかな?少しそれてるわね。軌道修正はできるけど、、むしろこのままあの一番高い棟に落ちた方がショートカットできるわね!運が良ければそのまま屋根を突抜けて玉座の間に出られるかもしれないしね!」










ロゼッタの言葉に一ノ瀬達は固まった。その表情は、(何を言ってるんだ?)と言わんばかりに、常識を逸脱したロゼッタの提案を理解しかねていた。しかし、そんなやり取りの中、落下し続けている一同の真下に城の棟がせまって来ていた。その事に気付いた一ノ瀬はロゼッタに指示を出した。








「ロゼ!!このまま行くと本当にあの棟に落下してしまう!!風魔法で落下の軌道を中庭までずらしてくれ!!」








一ノ瀬の必死な指示にロゼッタは不服をもらしかけた。








「でもそれ遠回りじゃない?このまま屋根を突き破った方が、、」








「「「「いいから早く!!!!」」」」






一ノ瀬達が焦りから放った叫びが完全に一致したため、ロゼッタは渋々魔法を使って軌道を反らした。その後中庭に向かって落下する五人は、地面との衝突寸前でロゼッタの魔法により軽く浮かび地に腰を下ろした。








「あのまま行った方が兵士にも会わずにすむから絶対良かったのに?」








無事着地して尚不満を呟くロゼッタに一同は未だ地に座り込んだまま心を失くした目で視線を送っていた。








「一ノ瀬どの?ソナタ達のパーティーではこれが当たり前なのか?よもや先程立てた誓いを成しえずに死ぬ事を心の中で無念に感じかけたぞ。」








光を失った瞳のまま、アテナが問いかけ、無表情のまま一ノ瀬が答えた。








「、、、いや、まあ、、否定はできないですね。」








魂を無くした様な四人を尻目に、ロゼッタは改めて気合いを入れていた。






「じゃあ皆行こう!」






((((ハァ~~。))))












暫くして一同は中庭から玉座の間までの道のりを歩いていたが、城内に争った形跡処か、城外には溢れんばかりいた魔族達の姿や痕跡が全く無く、城を守る兵士や使用人達が至るところで気を失い倒れているだけであった。その為、城内は城壁の外側から聞こえる戦闘の音や地響き以外の物音が無く、不気味な雰囲気をかもし出していた。その状況に驚き、エリアスはアテナとリムに声を掛けた。








「これはどういう事何でしょうか!?私達が国を出る前にはこんな状態ではなかったはずですが?」








エリアスの問いかけに驚き訳も分からずアタフタするリムを他所にアテナがある事に気が付いた。








「外傷は無いが少しだけ、闇魔法の魔力を感じる。城内で闇属性の魔法を扱う者に心当たりは無いのだが?」








思考を巡らせるアテナの言葉にアタフタするリムが言葉を発した。






「じゃあもう城の中に誰かが入り込んだのかな?でも外にいた魔族達の中でこんな器用な事をできる人が居たとしても、ただ気絶させるだけの必要ってあるのかな?」










三人のやり取りから一ノ瀬はある疑問を問いかけた。








「エリアス?一つ聞きたいんだけど、この国の王は何の属性魔法を使えるんだ?外から入ってきたにしては異様に思うんだけど?」








一ノ瀬にロゼッタも続けた。








「それは私も思ったけど、敵に城門まで追い詰められている状況で、この国の王様がわざわざこんな事をする方がおかしいと思うわ。」










二人の言葉からますます状況が分からないなか、アテナが皆に言葉を投げ掛けた。








「分からない事が多いが、玉座の間まで行けば何か分かると思う。状況が悪化する可能性もあるがゆえ、急ぎ進もう!」








アテナ達は迷いなく、玉座の間に向かった。


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