第36話 バレット王国

ベルトレを起こしたロゼッタは、この先にあるバレット王国への潜入について、アテナ達と話しをしていた。




「確認なんだけど、国の中にある城門までには2つの門があるのよね?そこ以外に城内に入る手段はあるの?」




ロゼッタの問いかけにリムが答えた。






「外から国内に入る抜け道は2つあります。ですが、その2つの抜け道を通るには、今の現状ではどちらも大きな博打なんです。一つは国の入り口の門と、国内にある門の間に繋がっていて、もう一方は国内の門と城門の間にでます。ただ、その抜け道を使って国民は国から脱出を試みているはずですので、相手がその事に気付いていれば、その抜け道が大きなリスクになってしまいます。」








リムは難しい顔をしていたが、その後にアテナがつづけた。






「だが、国内から逃げる者がいる中で、逆にこのタイミングで入国を予想する者も少ないだろう。だだ、ここでその抜け道を知り、待ち構える者が一人いる。それは国王だ。王は幼少に幾度もその抜け道を使い外に出ていたらしく。その中には城門内にまで続く道まで有ったらしいが、今は閉鎖され、今ではその道の有りかは国王のみが知るだけだと聞く。何にしても、我等の敵は多すぎるゆえ、時間の経過と共に状況は悪化するだろう。」








アテナの話しに皆は顔を突き合わせていたが、突如として一ノ瀬が言葉を発した。








「ならさ?既存の道に頼らなくて、新たな道を作り進めばいいんじゃないかな?その上で相手の間を抜けて行けばリスクは避ける事ができると思うんだけど?」








一ノ瀬の突拍子の無い発言に皆は理解しかねていた。








「一ノ瀬?それはどういう事だ?戦闘地域で別に抜け道を作るなど、不可能に思えるが?何か案はあるのか?」








ベルトレは一ノ瀬に疑問をなげかけた。その質問に、一ノ瀬は更に突拍子もない発言をした。








「抜け道は、〈道〉じゃないといけない決まりは無いと思うんだ。もうひとつ言うなら逃げるんじゃなくて、入るなら尚更簡単だと思う!その方法は、、」








疑問が疑問を生んだ一ノ瀬の発言に、その意図を一同は詳しく聞いて、驚愕する事になった。ロゼッタは一ノ瀬に聞きなおした。






「、、、確かにそれなら相手の包囲網を突破できるかもしれないけど、、、本当にやるの?」








一ノ瀬の真剣な眼差しから、一同は徐々に決心を固めていたが、一ノ瀬は更に作戦を言い伝えた。






「ああ!だけど、この作戦は朝になってしまうと相手に見つかってしまうのと、一瞬の注意を反らす必要があるんだ。その為に、セリスとクラインとベルトレには、国の正面から入ってもらいたいんだ!」








一ノ瀬の作戦に戸惑いながらも、他に代案が無い一同は明け方までの僅かな時間で潜入する為に、先程一ノ瀬が吹き飛ばした荷馬車の一台を使い、急ぎバレット王国へ向かった。












バレット王国からは幾数の炎が国内の至る所から上がっており、今尚争いの音が幾重に重なり、国外まで響いていた。その音を聞きながら破壊され無惨な姿を晒す国の入り口にある門は、左右の扉が爆発によって、国内に吹き飛んでいた。空中では魔族と交戦する鳥人族と、飛行魔法を使う獣人族の兵士達の姿があり、石畳のひかれた街の中では、魔族と共闘する4メートルはある巨人族が幾数に及び、街を破壊しながら獣人族を圧倒していた。








「ふむ、懐かしい光景であるな。わらわも生前幾重にわたり戦地に巡りあってきたが、まさかあのプライドの高い巨人族が他種族に加担するとは、時代は常に廻っておるのだな。」






「魔族が他種族の手を借りる様になったのはほんの20年程前だからな。貴様が知らんのもしょうがないだろう。」






「感傷にひたる暇はないようですよ。あちらからデカ物が二体こちらに向かってきているようなので。」






三人は順に言葉を発した。






「わらわの復帰祝いだ!湿気た花火はいらぬぞ!」






「我を差し置いて軍を率いる者に劣るなどありはしない!」






「この国の負なる歴史をすべて燃やし尽くして差し上げましょう!」








三人が国の入り口で巨大な地響きと共に爆炎を上げたのを確認した 一ノ瀬とアテナ達は、それを合図に行動を開始した。








「一ノ瀬殿。貴殿らの力をお借りする!今宵我が剣で、王を討ち、国の礎を作り替える!!」








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