第10話 眠りにつくまで、、

一同はレイヤの話しからさらに階段を上り詰め、大樹に建つ建造物の最も高い所にポツンと佇む民間にたどり着いた。


「お疲れ様でした。こちらが私達の家になります。どうぞ中へお入り下さい。」








レイヤの言葉で皆倒れるようにレイヤの家に入った。


「お邪魔します。」


一ノ瀬は、中に入りながら誰も居ない空間に挨拶をした。






「ハ~疲れた~。」


「お疲れ様でした。レイヤさん、姫様を休ませたいのですが、寝室をお借りできますか?私どもは適当な場所でいいですので。」


室内で膝をついてそのままの眠ってしまいそうなロゼッタを見かねたクラインがレイヤに寝室の場所を聞いた。








「寝室はこの先にある一番奥の部屋になりますので、ゆっくり休ませてあげて下さい。」


レイヤの言葉を聞いたロゼッタは、奥の部屋に繋がる廊下に吸い込まれる様にフラフラとおぼつかない足取りで、寝室に向かっていった。


「皆さんはあちらに布団を用意しますので、そちらで休まれて下さい。」








レイヤは部屋の隅に布団と毛布を用意した。先程まで気丈に振る舞っていたクラインは寝室に入るロゼッタの背中を見送り、突然糸を切られた様に、直立のままうつ伏せに布団の上に倒れこんで寝入ってしまった。








































「一ノ瀬さんはお休みにならないのですか?よろしければこちらに座られますか?」


ある意味クラインのベッドインが衝撃的だったせいか、目が覚めた一ノ瀬は壁にもたれかかって座っていた。


「色々気を使って頂いてありがとうございます。それでは、少し失礼します。」








テーブルを挟んで一ノ瀬はレイヤの前の椅子に腰かけた。暫くして、レイヤは一ノ瀬に語りかけた。


「あまりお見かけしない服装ですが、一ノ瀬さんは何の種族なんですか?」


未だ異世界に慣れずにいる一ノ瀬は、人生で初めて種族を聞かれた事に改めて自分が異世界に居る事を実感した。








「えっと、俺は人、族で合ってるのかな?一般的には人間と呼ばれているんですが、昨夜別世界から召還されたばかりで、この服は元の世界の学校で定められていた服なんです。」


レイヤは一瞬驚きはしたが、直ぐに冷静な態度にもどった。








「そうなんですね。という事はあの神殿からここまで歩いて来られたのですか?」


レイヤは一ノ瀬が召還された神殿のことを知った様子だった。


「はい。まあ道中色々あり、余計に回り道した様な感じですが。そう言えば、その回り道の原因であるベルの姿が見えないんですが?」








一ノ瀬がベルトレの事をベルと呼んだ事に再び驚くレイヤだったが、その表情を、昔を懐かしむような表情に変え、一ノ瀬に語りだした。








「ベルが貴方にその呼び名を許しているという事は、ベルの中で一ノ瀬さんはきっと大切な方としてるのかもしれませんね。ベルであればおそらく、この家の上の幹が分かれた場所に居ると思います。あそこはベルがこの場所を去る時に最後におもむいた場所ですから。」








「そうなんですか、、、」


一ノ瀬は過去にこの場所にベルトレが居た事を知り、初めてレイヤと会った時の「おかえりなさい。」と言った言葉の意味を理解した。しかし、未だベルトレがこの場所に近付きたがらなかったことへの疑問ははれずにいたため、その事をレイヤに聞いてみた。








「実は、ここに来るまでに、ベルはどうしてもここに立ち寄る事を嫌がっていたのですが、対照的にレイヤさんのベルに対しての対応が、俺には友好的に見えました。魔族に集落が襲われた事とベルは何か関係してるのですか?」


半ばレイヤの傷口を開いてしまうような質問であったが、一ノ瀬は最悪の形でベルトレがその件に関係しているわけではないのではと思い、意を決して問かけた。








レイヤは一ノ瀬の問いかけに少し考える素振りをみせ、いいよどむように喋りだした。








「結論から言うと、魔族たちの強襲はベルと全てでは無いにしろ、関係はありませんでした。ですが、ベルはその中で、心に大きな歪みを生んでしまったのです。すいません。これ以上は私の口からはお伝え出来ません。」


「そう、ですか、、、言いづらい事だと思いますが、話していただきありがとうございました。そろそろ自分も休みたいと思います。」


「はい。ゆっくり休んで下さいね。」








これ以上は追及できないと思った一ノ瀬は、結果として疑問を残す形のまま、ベルトレを待たずして、布団まで移動し、ゆっくり瞼をおろした。








一方、レイヤの言っていた幹が空に向け二股に分かれている場所に未だベルトレはいた。ベルトレは目の前に置かれている2つの短剣を見つめながら静かに涙を流し、涼やかな夜風をその身に浴び続けていた。

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