第7話 森での迷走
木々の間から星が輝き、微かな月明かりにより、かろうじて目の前の景色が確認できるほどに暗くなった森を、未だ一向は歩みを進めていた。
「はぁ~。予定では森の中にある守り人の集落に着いてるはずなのに、、、」
先頭を歩くロゼッタは、疲れはてた様子で盛大にため息を吐き愚痴をこぼしていた。その後ろを歩いていたクラインが冷めた様子で、ロゼッタの後に続き愚痴をこぼした。
「道中このバカの迷走、または奇行により、大きくタイムロスをくらいましたから。いっそあのままこの御荷物を私の魔法で燃やし尽くせばよかったとつくづく思います」
そう口にするクラインと横に並んで歩く一ノ瀬は、最後尾で植物のツタを足に巻かれ顔面を地面でズルズルと擦りながらツタを持った二人に力なく引きずられているベルトレに冷ややかな視線をなげかけていた。
空に夕陽の赤い色が見え始める少し前、休息を終え歩き続けていた一向の最後尾で、ベルトレが三人に問いかけた。
「そろそろ日が落ちかけているが、いったい何処に向かっているのだ?何処かで夜営でもするのか?」
未だ森を抜ける気配が無い事に不安を懐いていた一ノ瀬も先頭のロゼッタに視線を向けた。
「あれ、言って無かったかしら?私達は森の先にあるこの国の首都に向かっているのだけど、今日はこの先にある森の守り人の集落で休む予定よ!」
「森の守り人?」
ロゼッタの返答に一ノ瀬は聞き返した。
「森の守り人って、木こりや植樹をするような者なのか?」
「守り人とは、その名の通り森に危害を与える者や、災害から森を守り維持し、その生涯を終える時その脚から地に根をはり、自らの体を樹木にする事で、森と一体化する種族です。」
クラインの説明を聞き、守り人の生涯を切なく感じた一ノ瀬だったが、これから向かう先の話を聞いたベルトレが突如としてその場で動きを止めた。
「ん?どうかしたのかベル?」
一ノ瀬がベルトレの方を向き質問をした。よく見ると、ベルトレは、顔を青ざめさせて、冷や汗を流していた。
「どうかしたのベルちゃん?」
ロゼッタも様子のおかしいベルトレに声をかけた。
「、、、、、、今晩は、野宿でよくないか?」
ベルトレはあれ程嫌っていたロゼッタのちゃん付けすらスルーして、三人に控え気味に提案をした。
三人はベルトレの言葉に疑問を懐くが、提案に対して全力で拒否した。
「いや~、それは無いかな。」
「休んでる最中に森の魔獣に襲われちゃうよ。」
「姫様と一ノ瀬さんを危険にさらす様な事を承諾できるわけ無いだろ。」
多数決で部が悪くなったベルトレはそれでもこの先の集落に行く事に拒絶反応をおこした。
「ならば!我は守り人の集落の次にある集落まで先に行って貴様らを待つことにする!」
子どもがだだをこねるよに言い捨て、皆から制止の声が上がる前にベルトレは飛び去っていった。
「おいベル!」
「いくら何でもこの森で一人は危険だよ!?」
「一ノ瀬さん!召還魔法であの大バカ者を引き戻してください!」
三人が順に声をあげ、一ノ瀬はクラインの言葉に従い召還魔法を使用した。
このようなやり取りが何度も行われた事により、日がすっかり沈んでしまい、今に至った。
何度も三人の所に引き戻されたベルトレの怒りの矛先は最終的にクラインに向き、最後は二人で魔法の打ち合いになった。そして、元々魔力を消費していたベルトレがクラインに返り討ちにあい、森の中を引きずられる事になったのである。
「結果的に、一人で魔獣と交戦する以上のダメージを受けてる気がするけど、、何でそんなにこの先の集落に行くのを嫌がったんだろう?」
クラインと共にベルトレを引きずりながら、一ノ瀬は素朴な疑問を呟いた。その言葉にクラインとロゼッタが反応したが、当の本人はいまだ、二人に引きずられる事により顔面を地面で擦りながらも気絶したままであった。
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