9話 ストレートに

「それでさ! その鶴貝さんとは話したのか!?」


「それが全く」


「え?」


 驚いた。


 全く話していないとは……。


「小心者だな!!」


「だよな……」


「話を聞く限りだと一目惚れだよね。その鶴貝さんを見つけられたのは良いけどどう話すつもりなの?」


「いきなり『好きです!』って言っちまうのか!?」


「そのつもりだった……」


「ぶっ」


「ちょっと。吹きだすのはよくない」


「悪い悪い!」


 ゲラゲラ笑っている坂上。


「ツボ浅すぎ」


「……やっぱ駄目だよな……」


「大丈夫だと思うよ。女子はそういうの結構刺さるし」


「刺さる?」


「まずさ、告白されるだけでドキドキするものでしょ? 一目惚れが嫌って人もいるかもしれないけど」


「だよな……知らない男から好かれてたって結構怖いよな」


「でも、鶴貝さん見た感じそんな人じゃなさそうだし、大丈夫そうじゃない?」


「ひーひー。いけるって! ファイトー!」


 一通り笑い終えた坂上が口を開いた。


「坂上が一番何もやってないよね」


「え!?」


「俺も思う」


 立案者の坂上が今のところ、何もやっていない。


 これはどうするのか?


「俺、何すればいい!?」


「坂上が女子が告白されて嬉しい方法とか上川に教えてあげれば? 経験豊富なんだし」


「え!? 意外ではないけどマジか……」


「ちょちょ。誤解を招くような言い方しないで!!」


「事実でしょ」


「何も言い返せねぇ……」


「ま、告白とかは男同士の方がいいだろうし。私はここで離脱ね」


「いやいや。告白ほど女子に聞くもんだろ!」


「俺もそう思ってた」


「……うそ」


「「ほんと」」


「結局最初から最後まで私が一番活躍してるじゃん」


「たしかに! 面倒くさがりの犬飼にしてはやるー!」


「坂上のせいだけど」


「げ」


 まあ、今は面白いからいいけどさ。


「それで? 今はどういう告白考えてるの?」


「ストレートに『好きです! 付き合ってください!』って感じ」


「ストレート、ね」


「恥ずかしくねぇの?」


「恥ずかしかったら両想いなんて一生なれねぇだろ」


「……坂上、見習え」


「そうするわ」


 その男気、結構いい。


「そのままでいいと思うよ。今時、ストレートで『好き』とか言う男子、少ないし」


「え。そうなのか?」


「そう。知り合いは告白された時、皆チャットアプリだったり電話で『付き合わね?』みたいな感じだし」


「たしかに! 俺もストレートに言ったことないかも」


「一回もか?」


「……おう」


「ほー」


「だから、ズバっと言うことを推奨します」


「分かった! ありがとな!」


「いえいえ」


 告白成功するように、祈ってますよ。

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