本と煙草と異世界転生

むつきばな

×××「俺にはわからない話」

「珍しい、こんなところに迷い込んで来るなんて」



「それも蒼色の魂とは、さらに珍しい」



「しかし、隔離したこんな場所に迷い込むなんて運が良いのか悪いのか」



「さて、どうしたものか…」



「暇つぶしにもなるし、少し調べてみてもいいな」



「蒼色の魂を調べるなんて久しぶりだし」



「飽きるか、調べ終わってからどうするかを決めよう」



「とりあえず、記憶を表示させて…と」



「…出身は異世界、地球の日本」



「この世界からじゃなくて異世界から迷い込んだのか」



「まぁ、あそこ以外の異世界からはこの世界に来られないからそれは別にいいか」



「性別は男で享年は25歳。死因は過労か?病気や事故って訳でもなさそうだ、ブラック企業にでも務めてたのか?」



「いや、これ仕事は普通だけどゲームのやり過ぎでまともに睡眠を取ってなかったみたいだな」



「最低限の睡眠で疲れが取れないのを誤魔化す為に栄養剤を摂取するのが日常って」



「あー、こいつ馬鹿だわ。こんな生活してればそりゃ過労死もするわ」



「死因はわかった、それでそれより過去はどんな人生を過ごして……」



「そういえば、名前見てなかったな。名前っと………」



「……………………は?」



「嘘だろ、あり得ない!?」



「向こうの輪廻に入らずにこの世界に来れたっていうのか?」



「神の誰かからの干渉?」



「蒼色の魂は珍しいけど、珍しいだけでわざわざ干渉する程じゃない」



「それなら、黒や白の魂のが使い道も多い」



「それに、この魂をこの世界に連れて来るくらい神が動いたらなら気付かないはずはない」



「なら偶然迷い込んだってことになるのか?」



「他の魂ならともかく、なんで…………」



「……………………………まぁ、いいか」



「流石に、これは予想もしてなかったけど」



「可能性だけを考えれば、全くなかったとは言えない訳だし」



「向こうの輪廻から外れたのか外されたのかは知らないけど、来ちゃったものは仕方ない」



「まぁ、向こうに送り返すのはなしだな」



「たぶん、俺が原因な気がするし」



「この世界で転生させるとしよう」



「ただ、少しばかり調整をさせてもらうけどね」



「神からの干渉があったとは考え難いけど、手札は多い方がいいし」



「それに、そっちのが楽しめそうだ」



「…………さて、と」



「…まず、転生する肉体から選ぶとするか」



「人間、獣人、エルフ、ドワーフ、魔族…」



「…ん、前世と同じ人間しかないか」



「他種族にして、気付かれたら面倒だし」



「…なら、転生先の国を選ぶべきか?」



「………まぁ、転生先の親を選定すればいいか」



「…見るべきは能力と遺伝的体質、余裕があれば血筋くらいでいいか」



「さて、都合良く問題がなくて魂が宿る前の胎児が見つかるといいが」



「……こいつは駄目だ、能力に問題ないが遺伝的な欠損が出る可能性が高い」



「……こっちは問題はないが、王族は流石に面白くないから却下」



「……おっ……ダメだ、魂が既に宿ってる」



「……これなら…なんだ…エルフかよ紛らわしい」



「……却下…却下…却下…却下…却下っと」



「やっぱり、都合良く見つからないか」



「ある程度は妥協するべきか?」



「いや、せっかくだからもう少し探してみるか」



「……………………………………………」



「……………………………………………」



「……………………………………………」



「………………………お、これならいけるか」



「遺伝的な体質、他にも身体能力や魔法適性も問題なさそうだ」



「…胎児も魂が宿る前のがいる、と」



「あとは、血筋なんだが…………うわぁ」



「偶然なんだろうけど、こんなこともあるんだな…」



「ま、まぁ問題ないだろ」



「これはこれで面白そうだし」



「これ以上探すのも面倒だし…仕方ないね」



「よし、なら親はこれでいいとして」



「胎児の方の確認と、必要なら調整と」



「…身体機能に問題なし」



「…魔法適性も問題なし」



「…保有魔力量は、必要なら自分で鍛えて増やすだろ」



「…各種属性への適性は調整が必要と」



「一つの属性に特化しているならいいけど、これは余りにバランスが悪い」



「四大元素に適性が一つもないってどういう事なんだよ?」



「逆に珍しいけど、これは使い物にならないからな」



「…うん、こんな感じでいいか」



「これで転生先の肉体の調整は終わりっと」



「…魂の方は調整する必要あるか?」



「…記憶は、まぁ削る必要はないか」



「異世界に転生させるんだから、前世の記憶がある方が面白そうだ」



「生まれつき記憶が残ってるかはわからないが、削ってないんだからそのうち思い出すだろ」



「…ユニークスキルって調整出来たっけ?」



「いや、下手に調整したらユニークスキルが発現しなくなる可能性もあるから触らない方がいいか」



「異世界からの転移者や転生者が魂の色や型に応じて発現するユニークスキルは珍しい物が多いからな」



「どんなユニークスキルになるか、おおよそ予想は出来てしまうが」



「出来るだけ、面白いユニークスキルが発現することを期待しよう」



「…あと、簡単に死なれたら面白くないから加護でも与えておくか」



「これならそれなりに死なないだろ」



「…これで、魂の方も終わりと」



「もう一度確認だけしてと」



「……見落としもなさそうだ」



「なら、これで転生させよう」



「じゃあね、もう再会することはないとは思うけど」



「もし再会することが出来てしまったなら、それはそれで面白そうだ」



「新しい人生で楽しめることを期待だけはしておくよ」



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