古代文字を作る


「古代語と古代文字」

 せっかく古代語を作ったなら、古代文字も作る必要がありますね。「古代」と言うくらいですから、おそらく千年単位の昔のお話でしょうから。ただ、文字を作ると言ってももちろん文字そのものを作るのか、あるいは古い「字体」を作るのかで手間が大きく変わってきます。結局、一般人の可読性がほぼないような字体にするのであれば一から文字を作るのと手間はあまり変わらないこともありますが、少なくとも設定につながりがあるという点で良く練られてるという印象を、読者に与えられるでしょう。



「篆書と隷書の例」

 中国では象形文字が転じて漢字となりましたが、あのくねくねした文字がいきなりこのカチッとした楷書となったわけではありません。そこには篆書と隷書という、大きく分けると二つの過程がありました。それぞれの特徴を見ていきましょう。


・篆書:左右対称で縦長。形は複雑で異質。線の太さは一定。角は角ばらずに曲がる。起筆は筆を包み込みながら書くことで丸みを帯びさせる。

・隷書:左右非対称で横長。形は整理され、楷書に近づく。線の太さに抑揚が付き始める。角は角ばる。起筆は篆書と同じく丸みがある。波磔のある横画がある場合もある。


 くらいです。調べてみればわかるのですが、とにかく篆書はややこしいです。参考に「書読」を篆書化した画像があるULRを下部に貼っておきま(1)

 対して隷書は楷書に近くなっているものの、依然として古めかしさはぬぐえませ(2)。波磔と言うのは、一文字の中で最も強調される横の線のことです。見ていれば大体わかります。

 相違点と言えば、①左右対称かそうでないか ②字形が縦長か、横長か ③線の太さは一定か などです。筆記具が筆の場合ではありますが、より古代文字らしいものは「左右対称で、線の太さは一定で抑揚がなく複雑である」ということがわかります。



〈何に書かれているか〉

 さて、上で古代文字の特徴なんかを考えてみましたが、あれはあくまでも筆記具が筆の場合です。その他の古代文字はだいたい石に刻まれていることが多いので、楔で打ったりなどまた違った形態を表すでしょう。考えられる文字の保存は以下の通り。

・石に筆で書く

・木に文字を書く(状態の良い場合は残る)

・文字の書かれた紙や本を魔法で保存する

・石を削って文字を掘る

・銅剣や土器など、出土物に書かれている

 などです。

 上の三つはどれも自由に書くことができますから、古代文字の特徴を説明することができるでしょう。特に三番目、もし書物を結晶とか何かで保存する魔法があれば、全く欠損もない完全な文字・古代言語を拝むことができることになりますね。

 下の二つ、石に刻んだり物に掘ったりする場合は筆よりも表現が制限されてしまいますが、いずれにしてもその世界の「今」で同じ系統の文字を使っているのなら、それよりも数段複雑な文字が彫られていると現実味があります。



〈応用するには〉

 その古代文字がその世界に生きている民族で使っているものがあれば、解読の必要はほぼありませんが、一方でどんな文字とも似つかない独自の文字の場合、まずは解読することから始まります。解読の方法まではさすがに書き切れませんが、取り合えず、「その古代文字を読んで古代語を理解できれば強力な魔法を手にできる」という設定であれば、悪人も善人も皆こぞってその古代文字を探し、有能な科学者を欲し、新たな古代文字の書かれた石碑が出土しようものなら戦争まで起きるかもしれません。古代の言語が原因で世界が混乱する、面白そうですね。

 あとは前項で、古代語をドラゴン(竜)の言葉とかいう例を出しましたが、その解読の鍵をドラゴンが握っているということで世界中の冒険者がドラゴンに会いに行くとかもいいストーリーになりそうですね。





(1)「Font Garage」https://font.designers-garage.jp/products/list?phrase=%E6%9B%B8%E8%AA%AD&font_category=10&weight=&os=&type=&maker=&submit=font_search

(2)「Pinterest 隷書体」https://www.pinterest.jp/pong_clarinet/%E9%9A%B7%E6%9B%B8%E4%BD%93/


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