手話を作る


〈手話という言語〉

 通常、言語と言えば音声を用いて意思を伝えるものを指しますが、しかし聾唖ろうあ者たちは音声を発することや聞くことができません。そうした人々による独自の言語が手話です。

 手話も言語ですから、独自の単語、文法を持ち通常の言語と同じように様々な意思を伝え交流することができます。ファンタジー世界には人間の他様々な種族が登場しますが、その際手話を用いるような種族が出てきてもおかしくはないでしょう。そうした考えで、今回は手話の応用を考えていきます。



〈日本手話〉

 日本には大きく分けて、日本手話と日本語対応手話があります。前者は聾唖者によって発達してきた手話ですから、いわば母語です。しかしその文法規則が日本語とは異なるために、それを日本語に対応させるよう成立したのが後者です。

 では具体的に、日本手話はどんなところが違うのかと言いますと、まず助詞に当たるものや、時制にあたるものがあまりありません。ですから例えば

1,私のパソコンは昨日壊れた

 といった文を手話で表現する際には【私、パソコン、壊れた】の三つと、過去の出来事であるということを示す【昨日】を表現するのですが、そうなると

1’,私は昨日パソコンを壊した

 と伝わってしまうかもしれません。この微妙な意味の違いは、手話の語順や表情、または1’の場合「私が」壊したということを強く強調するために、【私】と何度も表すことで伝わることもあります。

 また、上で表情と言いましたが、日本手話は表情や口型など顔で意味を変化させたり固定したりもします。例えば【意味】を示す手話を疑問の顔つきで行えば【なぜ】という疑問視になります。また動詞と名詞が流動的で、【雨】と言う名詞が【雨が降る】と言う動詞になる場合もあります。

 もう一つ、手話には独特な点があります。通常の言語は声で一語一語発音するためどうしても意味表現はどんな場合でも一つだけですが、手話の中には片手だけで意味を示すことができるものがあります。それらを組み合わせれば、同時に二つの意味を示すことができるのです。たとえば【少し】と【好き】は互いに片手表現なので、【少し好き】は同時に示すことができます。音声に頼らない言語ならではの強みですね。


 以上、ひとまず手話の特徴をさらりと解説しました。次はどう応用するかです。



 〈魚人族・魔法〉

 私がぱっと思いついたのは、声を発することができない環境に生息する種族です。海の中などは非常に音声が伝わりにくいですから、魚人族などは手話を用いる種族であるとしても納得がいくでしょう。ただ、水中は地上よりもかなり視認性も悪いですし、何より手話は両手が塞がっている場合は話せませんから、その場合などは超音波とかで意思を伝えあうかもしれません。  

 この設定の場合、人間がこの魚人族に出逢うことで聾唖者の画期的な意思疎通手段が見つかって、聾唖学校が立ち上げられたりしてもいいですね。その場合は、もう魚人族の使う手話をそのまま教えるとかもありそうです。

 

 もう一つの応用例は、魔法に関連したものです。その世界の魔法の仕組みにも関わってきますが、魔法はたいてい口で言葉を発するとか、あるいは本人が魔法を念じると発動します。でもそれが手話であってもいいと私は思います。ちょうど、忍者が気を高める時などに手で作る「印」のように。魔法それぞれに対応した手話・形があって、それを一つ一つ示すことで発動するのです。

 このいいところは音声を必要としないところなので、場合によってはこの手話に対してさらに「呪文詠唱」を追加してもいいですね。あるいは手話の「印」は、より呪文の能力を高める効果がある選択肢のような設定もいいでしょう。



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