第13話 MITヘ行く

「俺たちは何としてでも「地球全体会議―もっこ25」を開催しなければならない。早急に打つ手を考えないと本当にこの地球がやられてしまう。そこでだ、このアンパン兄ちゃんとキティ坊には知り合いが多い。有識者、専門家たちを沢山知っているんだ。そういう人は俺たちの数倍、頭がよくアイデアも持っているはずだとキティ坊がそう言うんだ」

 はったんが熱く語り続ける。

「MITを知っているだろう。あそこに変態物理学の世界的権威がいる。その博士に相談に行ってみるべきだと思わないか」

「あのもの凄く頭の良い奴が集まっている大学か。良い案だね」

 バオバオもその点には気づいていなかった。やはり強敵ニッキーねずみたちの妨害を止め、奴らを壊滅するためには鋭いやいばごとき知恵が必要不可欠なのだ。


 モグラのはったんとフランキー・バオバオ、それに新たにメンバーに加わったアンパン兄ちゃんとキティ坊の兄妹は、四人連れだって下連雀しもれんじゃくが世界に誇る知の殿堂・MIT、つまりミタカ・イノカシラ・オブ・テクノロジーへと向かった。


 その名が示すようにMITはここ井の頭公園内にある。実際この四人の内、三人はOBであり、キティ坊は変態物理学科の三年生である。


 来るものを威圧する荘厳な造りの第一研究棟入口を入り、四階の一番奥にさらに来るものをこばむかのように異臭を放つ部屋こそ、キティ坊が所属する変態物理学の世界的権威、稲荷五郎いなりごろう博士の研究室である。


「先生、先生! キティ坊です。ご相談に来ました」

 キティ坊が厚く閉ざされたドアをノックする。

「なに、いまうんこしてるから、ちょっと待って」

 ドアの向こうから稲荷博士の声が響く。

「先生はいま、うんこをしています」

 振り返ってキティ坊が皆に告げた。皆は言われたとおりちょっと待った。


 しばらくするとドアが内側から開けられるかと思いきや、はなっからカギなんかかかっていないので、四人は勝手に入り稲荷博士のうんこが出るのを待つことにした。


 稲荷博士はズボンをたくし上げながらビニール袋を持ってトイレから出てきた。

「先生、それは新しい実験の・・・」

「いやただの検便だ」

 そういうとすでに勝手に部屋に入り椅子に座っている四人に向き合うように博士も椅子に腰掛け、いま出たばっかりの検便を机に載せて言った。

「どうだ、良い具合のが出てるだろう」

 四人はいま出たばかりの博士のうんこをしばらく眺めたが、ことは急を要する。早くニッキーたちに対抗しうる斬新なアイデアをこのバカから引き出さなければならない。

「先生、実は相談があるんだ」

 はったんが口火を切った。

「分かっている。全部分かっているぞ」

 稲荷博士は自信満々に答えた。


 東は吉祥寺から西は三鷹まで、だいたい全世界のことを知っている博士である。知らないことなどあろうか。




(つづく)


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