第6話 屋上の床

「そうだね……君が負けた場合は僕に従ってもらおうかな」


 俺はその時の三原の笑みに不気味なものを感じた。……何より男に従う趣味はない!


「で、勝負っていうのは異能力を使ってやるのか?」


「そうそう。まずはこれを付けてくれない?」


 俺は三原から投げられたもの……バッジ?のようなものを受け取った。


「これをどうするんだ?」


「制服の襟の所につけてくれ」


 俺は三原から言われた通りに制服の襟の所にバッジを付けた。三原も同じようにバッジをつけていた。


「これを先に奪った方が勝ちだ」


「なるほど。分かった」


「それじゃあ、始めようか。制限時間は3分。あの時計の針が昼の1時になるまでだ」


 こうして、俺と三原衛との戦いが始まろうとしていた。


 一体、三原の異能力は何なのだろうか。それも知らずに勝負を受けたのはマズいよな……。向こうは俺の異能力を知ってたりするんだろうか。


 まあ、どんな異能力だったとしても、俺の時の圧縮者コンプレッサーオブタイムの敵じゃないだろうがな。


「それじゃあ、始めるぞ!」


 俺は始まった瞬間に異能力を発動させた。


 三原は全然動かなかった。


 俺は『今だ!』と思って力強く踏み込みを入れて三原に近づこうとした。


 しかし、そう上手くは行かなかった!


「何だ?足元が……!」


 ここは学校の屋上だ。頑丈に出来ているはずだ。なのに、どうして足元が沈んでいくんだ!?


 何か柔らかくなってやがるぞ!干したてほやほやの布団みてぇに!


「マズい、一旦解除だ!」


 俺は一旦異能力を解除した。


 しかし、体勢を崩して倒れこむころには硬さは元に戻っていた。


「どうしたの?何か落ちてたのかな?」


 ……ちっ!なんかむかっ腹が立ってきたぞ!畜生!


 それにしても今のは三原の異能力なのか!?


 床を柔らかくする能力……?


 もう少し戦って見ないと何も分からないな。


 俺は再び三原に接近しようと身構える。


 しかし、依然として三原は棒立ちの状態から動こうとしない。


 全く、訳が分からないな。この戦いの勝利条件はバッジの奪取だ。


 とりあえず、この勝負に勝つことだけを考えよう。


 三原は何故か、バッジの所をガードしていない。


 何をする気なんだろうか?


 その後も近づこうとした時だけ床が柔らかくなり、その度に俺は転倒を繰り返した。


「あれ?どうしたのかな?制限時間は残り30秒しかないぞ?」


 ……俺の異能力の中ではあと5分あるということだ。


 しかし、残り5分でこの状況を打開できるのだろうか?

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