第4話 心を読む者

「あの、せ、先輩……」


 視界から純白のモノは見えなくなっていた。


 その代わり、鼻血が吹き出そうなほどの可愛い女子が俺の顔を覗き込んでいたのだった。


 その女子の髪はオレンジよりの茶髪をウェービーロングヘアで、瞳は碧色あおいろをしていた。何と可愛らしい見た目をした少女だろうか。


「あ、あの先輩、聞いてますか?」


「あ、ああ。聞いてるぞ!」


「えっと、助けて頂いてありがとうございました」


 そう言って少女は深く頭を下げた。


 いやあ、何だかを拝ませてもらった上に感謝までされるとか……最高だな!


「……って思ってるんですよね?先輩」


「お、俺の思ってることがバレてる!?どういうことだ!?」


「だって、それが私の能力ですから」


 俺は驚いた。別に異能力者が他にもいることは知っていたが、まさか、よりにもよって、こんな美少女が異能力者だったとは!


「……とか思ったんでしょう?今」


「……すげえな。ホントに考えてたこと読まれちゃってるよ……。それ、何て名前の異能力なの?というか、何で俺が異能力者だって分かったの?」


 俺は質問に質問を重ねた。


「えっと、この異能は"心を読む者リーズザハート”っていうらしいです。もっとも私が名付けたわけではないんですが」


「へえ、"心を読む者リーズザハート”か……」


 心を読めるっていい能力だな。羨ましいけど、俺のやりたいことにはそぐわないなぁ。


「そういう先輩の能力は?」


「俺が言わなくても、もう分かってるんだろ?」


「はい、分かってます。人間って質問されたら答える気が無くても考えるので、その心の声を読めば聞きたいことが聞き取れます」


 ……便利すぎるだろ、それ。


「それで?俺の異能力名は何だと思う?」


「“時の圧縮者コンプレッサーオブタイム”ですよね?」


「正解。さすが“心を読む者リーズザハート”」


 まさか、後輩に異能力者がいるとは思わなかった。


「そういえば、先輩」


「名前を聞いても良いですか?」


「……あ、俺の名前は菊井真也。」


「それじゃあ、菊井先輩!助けていただきありがとうございました!」


 そう言って、その美少女は走って行ってしまった。


 ……ていうか、俺何も答えてないのに名前知られちゃったよ。ホントに口に出さずにコミュニケーションできちゃう奴じゃん。


 そして、俺は一つ大事なことを忘れていた。


「しまった!あの子の名前聞くの忘れてた~~!」


 クソォ~、名前は知らないけど異能力名は知ってる。


「ま、一年生に変なことしてるうちにまた会えそうな気がするがな……」


 俺は時間も時間だったので教室まで歩いて戻った。


 ……今から女子陸上部の部室に行っても着替え終わってる時間だしな。

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