第2話 ミューテーション (新人類の行く先)

 20数年前、隕石が日本海溝あたりに落下した。

その時の被害は衝撃波によるものと、2M程度の津波であった。

ほとんどが大気圏で燃えた為、さほど大きな隕石では無かったのだろう。

調査団が落下した隕石の調査に出動したが、日本海溝の最深淵部に沈んだようでかけらが数個回収されたのみで終わった。

回収した隕石からは、これまで地球上に無かった物質が発見されたと世界中で話題となり、科学者達がこぞって分析し始めたが、もっと大きな問題が発生しそちらに注力せざるを得なくなった。

その問題とは未知のウイルスである。

日本海溝最深部に溜まっていた泥や砂、生物の死骸等も隕石の落下により海面付近まで拡散した。

その中にウイルスがいたのだ。

それが津波によりさらに拡散された。

数週間後、ウイルスはまず魚類に感染した。

刺身等、魚類を生で食する事の多い日本で変異し、人への感染は広まった。

そのウイルスは元々深海に生息していたものなのか、隕石に付着していたものなのかは未だに判明していないが、これまで発見されたウイルスとは全く違っていたため、治療薬の開発が遅れた。

その為世界中に広がりパンデミックとなった。

ウイルスによる症状は人の脳へのダメージだった。

脳炎、記憶障害、認知症、脳の機能低下のため、運動能力の低下や植物状態等、様々な症状が報告された。

かつて無い犠牲者を出してしまうが、本当の問題はその後に顕在化した。

ウイルスに耐性を持つ事が出来た女性から誕生した子供の中に、ESPを有する”新人類”が成長と共に覚醒したのだ。

妊娠初期に感染した妊婦の子供ほどESPが強い傾向があった。

耐性が出来た後に妊娠、出産した子供にもESPが発現した。

感染が認められなかった大多数の男女の子供にはESPの発現は無い。

遺伝子が関係しているのか生活様式、習慣の違いか原因は不明だが、”新人類”の誕生は日本以外ではさほど多く出現しなかった。

在日の外国人からの発現も他国と同等のレベルであった。

遺伝子が近いであろう隣の大国は情報規制がされており、実際の数は不明だ。

ただ、友好国の隣国でも少数であった事は把握出来ている。

突然出現した”新人類”は多くの”旧人類”とって、脅威でしか無かった。

それは様々な不幸を招く結果となった。

未知なるものに対する恐怖や、マイノリティーに対する差別は人の心の奥底に根深く存在しているようだ。

”旧人類”は”新人類”の排除を選択した。

自然と多くの新人類は結託し、旧人類との争いが勃発した。

新人類の中でも、旧人類と同等の権利と共存を欲する者と、旧人類にその力を以て自分たちの自治区を作るため、時の政府に対抗する組織とに分かれた。

一部は暴徒と化し、旧人類を攻撃する者もいた。

彼等に対し、時の政府は武力での鎮圧を選択してしまった。

能力を持つ者と持たざる者の戦闘力差は歴然であったが旧人類は数で対抗していた。

その混乱をついて友好国では無い数国が日本に侵攻してきた。

友好国は自国の諸問題対応のため、支援が遅れた。

だが皮肉にも敵対国からの侵攻を退ける事ができたのは”新人類”に依るものが大きかった。

それらの攻防は日本の”消された闇の10年”とされていた。

ある人物の出現が”旧人類”と”新人類”の共存を成立し、”新国家”となり今に至っている。

日本は世界有数の”能力者大国”となっていた。

だが悪意を持つ能力者の存在は無くならない。

そういった者たちが犯罪組織を確立するのはそれほど期間を必要としなかった。

その組織に対抗するため、能力者で構成された”新国家”組織が特務警察特殊部隊であった。

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