第17話 心躍る校外学習はバスの中から

出発したバスの中は興奮した生徒達で騒がしい。


バスの席はグループ毎に別れている為、仲良しグループははしゃぎ放題だ。


因みに俺たちのグループは平川と新川の人気ツートップがいる為、少し離れたところ席からも話しかけられていたりするので、なんだか忙しそうだった。


俺?当然イヤホンをつけてアニソンを聴きながら目を瞑ってるだけだ。


だって隣が竜崎なんだよ。なんかうるさくしたら怒られそうだし。


竜崎は俺と同じようにイヤホンをつけながら窓の外を眺めていた。


普段みんな避けているので気付かなかったが、横から見るとかなり整った顔立ちをしている。


窓の淵に片肘をついて頬杖をつく様子は実に絵になっている。


トクン。心臓が高鳴る。


という冗談は置いておいて、じっと顔を見つめるのも失礼なのでふと目線を前に戻す。


腐女子喝采の描写を入れたところで、前に座っていた新川が座席の横からこちらを覗いてきた。


「ね、トランプしない?」


そう言ってトランプを見せてくる新川はどこか楽しそうだ。


「おぉ、別にいいぞ」


「よしっ、やろう!……竜崎君も、どうかな?」


新川は少し不安そうに俺の隣に座る竜崎へと声をかけた。


俺と新川の視線に気づいたのか、竜崎はイヤホンを外した。


「……なんだ?」


「えっと、グループのみんなでトランプするんだけど、小鳥遊君もどうかなって」


「……いいぞ」


「「へっ?」」


俺と新川の声がハモった。


そりゃそうだろ。まさか竜崎がトランプの誘いに乗るなんて誰が予想できただろうか。


「なんかおかしかったか?」


「う、ううん!じゃあ早速やろっか!」


バスは2席ずつならんでいるので、ババ抜きはやりにくいということで、大富豪とダウトをすることとなった。


結果的に竜崎が圧倒的に強かった。マジで。俺も追随したが、一度波に乗った竜崎には勝てん。


てか竜崎表情変わらねぇからダウトとかマジ最強だった。


竜崎は時間が経つにつれ口数もだんだんと増えてきて、少しずつだが俺達のグループに馴染めてきたようだった。


ちなみに余談だが、新川はめちゃくちゃ弱かった。けど橘はその新川以上に弱かった。


あわあわしながらカードを選んだり、声を震わせながらカードを出して、秒でみんなにダウトって言われたときの橘がすごく可愛かったです。




◇◇◇




約5時間後、最初の方ははしゃぎまくっていたクラスメイト達も、慣れないバスでの長旅に疲れ切ったのか俺を含めて殆ど爆睡していた。


しかしバスを降りた生徒達はその大自然にテンションが上がったのか、またもはしゃぎだした。


校外学習の初日はアスレチック体験らしい。






なんか子供っぽいな。とか思ってた時期もありました。はい。


それはもうめちゃくちゃ高いしガチの命綱つけるしめちゃビビった。


女子とか泣いてるやついたぞ。


空中約10mに浮かぶ橋は踏み外せば命綱有りでも怖い。


カーゴネットという、網に足と手をかけて横向きに歩いていくアスレチックも、誰かが揺れると全員に振動が伝わるから阿鼻叫喚だった。


俺は四苦八苦しながらも着実に進んでいたのだが、ふと前を見ると、竜崎が異常なスピードで進んでいるのが見えた。運動神経お化けめ。


平川も持ち前の運動神経で竜崎を追いかけるが、みるみるうちに離されている。


下では既に終えた生徒達がこちらを煽りながら見ているのだが、平川と竜崎の運動神経に黄色い声援を飛ばしていた。


くたばれイケメン共。


そんな俺の呪詛が届いたのか、順調に進んでいた平川が少し足を踏み外した。


女子達から悲鳴が上がる。


けれど平川は焦ることなく、寧ろそこからペースを上げて竜崎を追いかけていった。


それを見た女子達がより一層黄色い声援を上げる。


「ちくしょう。逆にエンジンかけちまった……」


いや別に俺の呪詛は関係ないんだろうけど。


はぁ。とため息をついた俺は引き続きアスレチック攻略へ意識を向けた。


あー。長ぇよ。どうせみんな竜崎と平川しか見てないんだし降りてやろうかなー。


とか不真面目なことを考えていた時、


「あいだくーん!頑張れー!」


「……あいつまた」


またもよく通る声で呼ばれた俺は注目の的となったが、同時に少しやる気も出てきた。


さて、後ちょっと頑張りますか。









余談だが、橘は一歩目を踏み出してからぷるぷる震えて動けなくなっていたらしい。


何それ見たかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る