Dado-27:世界律は/専断に


<いよいよ『第五局』ッ!! いやもう『準々決勝』と言っても過言ではありませぬかなッ!? 今度もおひとりさんは『ラッキーシード』でありますゆえ、そこにも着目ですな!! ではでは組み合わせ発表~!!>


 相変わらずの、悦に入ったような陽気な不気味さを醸す主催者の声が響いて来た。ここで目覚めた時には既に喉元の得体の知れないモノと共に、左耳にひっかかるようにして装着されていた「イヤホン」のようなものから、翻訳された言語がほぼ同時に流れてくるので総意は掴める。


 ここまで来れた自分の「強運」? にも驚きだが、さりとて現実味も何も湧いてこないのが正直な実状ではあるが。


 そして先ほどの「青年氏」の容態も気にはなるところだが。


 「勝負」に負けたからといって、あのような「意識不明」……と言ったらいいか、ともかくそのような状態に陥るといったことは、これまでに無かった。はず。そして他ならぬ自分がその撃鉄ひきがねとなってしまったかのように思えて、何とも落ち着かない気分だ。


 窓の外はいつの間にか真っ暗に帳が落ちており、俺の姿もこのだだっ広く感じるようになった空間ホールに、間抜けに突っ立っているサマが割り合いはっきりと外界とここを隔てる巨大なガラスに映し込まれている。


「……」


 いったん、大きく息を吸い込み、細く長く出来るだけ、呼気を絞ってそうして気分を落ち着けてみる。意識は正常にはっきりしている。というより、もっと言うと、何かがキマってしまったかのように(経験は無いが)、周囲が、クリアにそして色鮮やかに見えるように感じている。何だ? この感覚は。


 場にはもう、ほとんど数えるほどしか「参加者」の姿は無い。勝てばぞんざいにカネの束を渡されるだけであり、負けて退場した時の処遇は……カネの負債がどうとか言っていたが、それらのやり取りも皆ホールの外で行われていたらしく、「勝者」たる我々には知る術は無かった。


 負けた者は、いったいどうなったというのか。先ほどの「青年氏」のように、「昏倒させられうる」、といったことはないのだろうか。


 目の前で見せられ、そして……その物言わぬ魂が抜けたような身体に触れたからかも知れないが、俺は、正直いま、怖ろしい。手にしたカネの、結構な持ち重りでさえも、逆に枷と感じてしまうほどに。


 しかして、ここまで来て「棄権」など、出来るはずは無いだろう。最早この場に残った「勝者」……参加者の多寡は「11名」、三回数えて間違いは無い。俺を含めての11人は、ホールのそこかしこを固めている黒服の人数、目測30名からして完全に少ない。総勢決起してもあっさり抑制されるだろう。懐に何を呑んでいるかも分からないこともある。


 まっとう、するしかない。勝ちを重ねるほかに、この場で丸腰で佇む俺にとって出来ることはそれ以外に無いかと思われる。


 そして、まったくこちらの心情も斟酌せずに、目の前に愛想無く展開する真っ白なスクリーンに、次なる戦いの「組み合わせ」が何の余韻も無く映し出されたのだが。


【074:854211】(14):ザキモト カリヤ

 VS

【086:833322】(30):シンヤ キョウイチロウ


【057:872220】(21):キサ ワカ

 VS

【054:873300】(22):カラスマ


【169:544422】(28):アオナギ ヨリヨシ

 VS

【042:933321】(33):オセル レノマン


【101:765210】(29):チギラクサ ウヨ

 VS

【038:943311】(21):オオハシ モトオ


【092:774210】(19):セタキ サトミ

 VS

【133:665310】(26):フタバ シュンスケ


(Lucky Seed!!)

【126:743331】(27):カワミナミ ジュン


 この「表示」は何故か「翻訳」はされてこなかったものの、数字とカタカナであれば俺にも分かる。そして見慣れた数字の列。括弧で囲われた(14)や(30)という数値は、「持ち金」だということもすぐに分かった。自分の得ている「3300万円」という額が、どれほどのものなのかイメージはつかなかったものの。


 いや、それよりも。


 対戦相手の番号を……俺は先ほどその胸のプレートが目に入って覚えていた。その数字が……次に自分と相まみえるということか。


 「アオナギ」。そのえらく長い顎の長髪男と、自然と目が合ってしまうのだが。


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