がんばるボスが率いる組織は いつか世界を救うかもしれない

妃代

プロローグ

プロローグ

青い空に白い雲。教室には、クラスメイトの笑い声とほのかに香るお弁当の匂い。窓辺の席はいい。暖かいお日様の光を浴びれるし、空の色や雲の動きを見ることが出来る。時折、校庭から体育の掛け声も聞こえてくる。窓から入ってきた春風が、外を眺める少女の頬を優しい手つきで撫でたあと、肩まで伸ばされた艶やかな茶色の髪をなびかせる。少女は、ぽつりと呟いた。


「平和だ…」

「何が?」


突然の声に、はっと我にかえる。声の主である少年は、少女の机の前にしゃがみ、顔を覗き込んでいた。


「な、なんでもないよっ。いい、天気だなぁって!」


慌てふためく少女に、少年は軽く吹き出した。


「なんだよそれっ。ほら、昼飯。屋上で食べようぜ」

「う、うんっ」


少女は、顔を少し赤らめて頷いた。



少女――愛田あいだ 琴音ことねは、幼馴染の少年――神代かみしろ 弘人ひろとと、この春同じ高校に入学した。家が近く、幼い頃からずっと一緒だった2人は、お互いにそれなりに信頼しあっている。だが琴音には、誰にも、弘人にでさえ話せない秘密があった。


「琴音、それ、メール?」

「えっ?あ、うんっ。ごめんね、どうしてもすぐ返信しなきゃいけないのがあって」


ふーん。と言って、弘人が画面を覗こうとすると、琴音はサッと隠した。


「なんだよー。見せらんねーのか?」


琴音はムッとして、頬を膨らます。


「あのねぇ、他人のスマホを勝手に覗くのは、デリカシー無さすぎるよ!」


と、そこへ放送が流れた。


「1年B組神代弘人、至急職員室に来なさい」

「やっべー…俺、何かやったっけ…」

「問題児は大変ねぇ」


琴音がニヤリとイタズラっ子の顔で笑う。


「問題児じゃねーし!!…行ってくるから、悪いけど先教室戻っててくれる?」

「うん、わかった」


そう言うと、弘人は急いで屋上から出ていった。


「危ない危ない。やっぱり学校で仕事をするのはリスキーだなぁ…」


琴音は、隠していたスマホを取り出し、返信の続きを打つ。


『実行してください。』



それは、望月もちづき 奏多かなたという人物から来た


『例の、国際指名手配No.53の件、突入隊のスタンバイ完了しました。』


という文に対しての返信だった。

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