1月4週目 中編 千咲視点

先輩に告白した翌日、私は枕元にあったスマホの音で起きる。




「んんん……なに……?」


スマホの画面に映った名前を見て固まる。




先輩の名前だ……普段あまりない先輩からの連絡に思わず飛びつきそうになるが回らない頭で思い出す。


そういえば昨日、先輩に告白したんだった……




ここでもしも出て断られたら二度と先輩と会うことはできないかもしれないそんなことを考えた私は


「ここで出たら後悔するかもなんだから、今日は我慢しないと……」


そう呟き先輩からの電話が鳴りやむまで待ち続けるのだった。






「うーん……!」


伸びをして起き上がる。


いつの間にか二度寝してしまっていた私はベッドからのそのそと出る。




スマホの時計を確認すると10時を差していた。


「もうこんな時間か……」


そう呟くとあることに気が付く。




複数件、優華から連絡がきているのである。


なんだろう……?


不思議に思いながらメッセージを開くとそこには私の想定外の内容が書かれていた。




『千咲!高杉さんから伝言で”今週は出張で帰れません”だってさ!』


そのメッセージを見て頭が真っ白になる。




先輩は私の告白が迷惑だったから出張に行ったんだろうか……だからこんな急に出張に。しかも一週間なんて……そんなことをグルグルと考えてしまう。




「はぁ……やっぱりあんなこと言わなければよかったのかなぁ……」


イヤな想像をしてネガティブな感情に支配される。




「あーあ……なにもする気が起きないなー」


完全に無気力になってしまった私は、そのままボーッとしてしまう。




どれくらい時間が経ったか、そんなことをしていると


”ピンポーン”


インターフォンが鳴る。




「なに……?」


慌てて手櫛で髪の毛を直してドアへと駆け寄る。




ドアについたレンズを覗くとそこには、優華の姿があった。


それをみてすぐさま扉を開ける。


「ど、どうしたの優華?」




「どうしたのって……あんた私のメッセージ読んでないわね」




そう言われて慌ててスマホを見る。優華から送られてきていたメッセージには続きがあり


『それと、今からあんたの家に行くわ。なにかあったんでしょ』


そう書かれていた。




「あ、ごめん。全然気づいてなかった……」




「やっぱり……そうだろうと思った」




「と、とりあえず上がって……優華に相談できるなら心強いし」




「うん、そうだと思った」


優華はそう言うと柔らかくほほ笑むのだった。






優華を部屋に招き入れて、コーヒーを出す。




「ありがと……で、なにがあったの?」




優華に促されるままポツポツと話し始める。


そして、先輩に告白したことを話そうとした途端、涙が頬をつたう。




「大丈夫!?」 


優華が慌てた様子で近寄ってくる。




「う、うん……」




「本当に大丈夫なんだよね?」




「だ、大丈夫だよ!」


優華をこれ以上心配させるわけにもいかないと考えた私は無理にでも笑顔を見せようとする。




しかし、そんなことは優華もお見通しな様で


「そんな変な笑顔みせられても信用できないわ」




「変って……」




「ま、折角の休日だし洗いざらい話してもらうしかないわね!」


優華はそう言うと張り切った様子で私の隣に座ってきたのだった。




☆☆☆




今度は泣かずに告白した話までし終えた私は、正面に座る優華を見つめる。




すると優華は立ち上がり私の手を取ったかと思えば


「もう!なんでそこで先輩の話遮っちゃったのよ!」


と少し怒ったような態度を取ってきた。




「え!?だってせっかく二人で出かけてるのになんにもアピールしてきてくれないし私のこと異性としてみてくれてないんじゃないかと思って……フラれるくらいならこっちから言わないとって……」




「なんでそうなるのよ!そんなプレゼントを渡したようなタイミングで、悪いことなんていう訳ないじゃない!」




「え!?そうなの?」




「そうよ!あんたが勝手に勘違いして暴走してるだけにしか思えないわよ!」




「ええ……じゃあ、私のした行動って……」




「そうね、先輩の迷惑になってるかもしれないわね」




「わ、私先輩に謝らないと!」


そう言ってスマホを探しているとその手を急につかまれる。


「なにするの優華!」




「まあ、落ち着きなよ。確かに千咲の行動にも問題はあったかもしれないけどその勢いじゃ返事も電話で済まそうとしてない?」




「うっ……」


図星を突かれてしまい言い返せない




「今すぐ連絡するよりも、もっと先輩に千咲の隙になってもらいたいと思わない?」




そんな悪魔の様な問いかけに思わず頷いてしまう。




「そう。それじゃあ、こんなのはどうかな……………」




そうして耳元でささやかれた作戦に私は目を見開く。


「ほ、本当にそれをしたら先輩は私のこと好きになってくれるの?」




「もちろん」




「じゃ、じゃあ作戦通り先輩が返ってくるまで私は連絡とらないようにする!」


そうして、私と優華による、とある作戦が決行されたのである。

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