第6話 ネイキッドキング

嗚呼!ダンゲル様!どうしても行かれてしまうのですか!?」

「そうだ。民のためにも、私が引くという選択肢はない!」


豪華で煌びやかな装飾品を纏った美しいうら若き王女と、一本の剣と鎧を身に付けた黄金の髪の壮年の王が、城の中で別れの挨拶済ませようとしていた。


「相手は異世界から現れた大空を泳ぐ竜をも屠し巨大ザメ……貴方様たった一人ではとても……」


王女がそういうと王は口角を大きく曲げ、大いに笑った。


「私の異名を忘れたか?私はネイキッドキング……サメを心配した方がいいぞ!」


そう言ってマントをたなびかせ、巨大サメのいる地へと向かおうとするダンゲル。


「待って!ダンゲル様!」


彼のマントを掴み、行かないでと懇願する王女。

そんな王女にダンゲルは優しく笑いかける。


「必ず帰ってくる。今日はフカフレパーティーだ」


そう言ってダンゲルは白い歯をキラリと光らせた。








「フハハハハハ!楽しいなぁ戦いは!!」


ダンゲルは高笑いを上げながら目の前の巨大なサメへと対峙する。

体長は50メートル以上の体躯を持ち、所々に傷があるところから、修羅場をくぐり抜けてきた歴戦のサメであることが分かる。


「フン、見た目だけは一丁前じゃねぇか!ガッカリさせんなよぉ〜?」


ダンゲルは三文芝居のような喋り方でサメへと向かっていく。


「オラッッッッ!!!」


彼は右手に持った剣を槍投げの感覚でサメへと投げる。

投擲された剣は見事サメの額のど真ん中へと突き刺さった。


「ッッッッッッッッ!?!?ッッッッ!!!」


サメは声にならない声を上げて身をよじらせた。

剣は深々と刺さり、身をよじっただけではとても取れそうにない。


怒り狂ったサメはダンゲルを食い殺さんと一心不乱に向かう。


大地はえぐれ、岩は粉砕、一度食らえばひとたまりもない巨大ザメの一撃。


それをチャンスと見たダンゲルは思い切り駆け出した。

彼は並の人間には到底出来ないような跳躍で一気にサメとの間合いを詰める。


剣の柄を右手で掴み、全身の筋肉の力を入れ、剣をサメの尾まで走らせた。


「フンヌアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


走らせるとともに、彼の後ろには斬られた事によってサメの血が壊れたスプリンクラーのように吹き出した。


やがて目から光が無くなり、力なく地上へとサメは落ちていった。


「ハアッ…ハアッ……へへ、どんなもんよ?」


倒したサメの頭の上にあぐらをかいて座ったダンゲルは、疲れながらも勝ち誇るように言った。


「クク……スカイシャークを倒しただけでそのザマとは……人間も堕ちたものよのう」

「!?誰だ!」


ダンゲルが振り返ると、そこにいたのは首から下は人間で頭にサメの被り物をした謎の男が立っていた。


「ヤツはサメ映画の中でも最弱……その程度で満足しているようでは、いずれ我々シャークリユニオンがこの地サンゼーユを支配するのも時間の問題だな……」


サメ男が言うと、ダンゲルはフラフラしながらも剣を突きつける。


「お前達の好きにはさせねぇ!この世界は…俺、サンゼーユ国の王である…ダンゲルが守る!」


ダンゲルは高らかに宣言した。

太陽は彼を照らし、風は彼のマントをたなびかせた。

その姿は一国の王であると誰もが分かる佇まいだ。


「さあかかって来るが良い!愚かな人間よ!!」


サメ男は肉体を肥大化させ、スカイシャークよりも巨大なサメへと変貌した。


ダンゲルは剣の柄を強く握りしめ、


「うおおおおおおおおお!!!!」


ダンゲルは雄叫びを上げながら駆け出した。

いつの日か、世界を救うと信じて……!










*****************************************








長い。


変な物語に時間を取らせるな。

この小説を見にきてくれた新規の人が困惑するだろう。


そしてここまで読んでちゃんと続きを読んでくれる君には作者も今頃感謝しているだろう。


さて、今の状況を説明しよう。

俺達は劇場へと来ていた。

劇場といっても映画館ではなく、舞台の方の劇場だ。


俺が来た時は街頭テレビやらタピオカやらハットグやらこちらの世界の文化が持ち込まれていたが完全に飲み込まれたわけではなく、その街の外観はそのままだった。

この世界の文化は死んでいない。


この地、サンゼーユは長い間ある一族が統治している。

そう、今出てきた王族だ。ダンゲルは先代の王で、今は彼の息子のディンゼルとやらが現役らしい。


さてここで君に質問だ。


君はこの劇をどう思った?


面白い?展開が熱い?


もし少しでも面白いと思ったのなら、もっと面白い劇や映画があると知っておいて欲しい。


そして頭の病院へ行こう。


「素晴らしい…!素晴らしいわ!」


彼女と共に。


メアリーが俺の隣で感極まったように言う。


「あ、うんそうだな」


俺は適当に言った。

なぜ俺達が劇場で、しかもカップル指定席で見ているかと言うと……


「開けて開けて開けて!どうして開けてくれないの!?私が嫌いなの!?私が好きすぎて逆に嫌いになっちゃったの!?でもわたしはそんなあなたも大好き!好き好き好き!だから開けて!!!」


俺がメアリーを助けた後、メアリーはずっと俺の跡をつけていた。


なぜ彼女は俺の部屋の前にずっといるのだろうか。

なぜ誰も止めないのだろうか。


「周りには誰も居ませんよ…?皆さんにはわたしの無性に外に出て散歩がしたくなる呪いを掛けましたから……」


なんだそのかなり限定された呪いは。


「あなたがお弁当をくれた時から、わたしはあなたに運命を感じました……ああ、間違いない!この人は運命の人だって!」


なぜ俺なのだろうか。

炊き出しのおじさんじゃダメなのだろうか。


「お願い、部屋から出て?今ならまだやり直せるから…!」


俺は母親を悲しませる引きこもりの息子か?


「お願いします!外に出て一緒にデートをしてください!なんでもします!あなたの望むことはなんでも!なんでもしますから!さあ!!」


じゃあ帰れ。


「お゛願゛い゛で゛す゛か゛ら゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛!゛!゛!゛!゛」


藤原竜也風に言ってもダメだ。


「あ、あの……お話くらいは聞いてあげてもいいんじゃないですか……?」


突然天使が俺の前に現れる。

まったく、人の苦労も知らないで……


「いいか?こういった輩はな一度つけ上がると段々エスカレートしてくるんだよ。最悪無理心中なんてパターンになる可能性だってあるだろ」

「でも、メアリーさんずっとあなたの部屋の前であなたを待ってるんですよ?一度くらいはいいんじゃないでしょうか?」


と言われ、俺はしばし考えた。


たしかに、ずっと俺が相手をしなければ、ずっと俺を待っているかもしれないし、もしいなくなっても近くで張っている場合がある。

やはりここは一度相手をした方が良いのだろうか……


「分かったよ、今開けるよ」


俺はそう言って部屋の鍵の一つを外した。

俺の部屋は幸運にも鍵が二つある。


その瞬間ガチャン!!とまだ鍵のかかったドアの隙間から無理やり開けようとするメアリーと目があった。


「あっ…やっと開けてくれたぁ………」


やめろ、その不気味な笑顔とセリフは俺以外だったら確実に失禁するぞ。


「お前の執念深さには参った。本当に参った。見ろ、この目のクマを。お前が呪詛のように俺への愛を一日中唱えていたおかげで俺はめちゃくちゃになりそうだ」

「めちゃくちゃになればいいじゃないですか。狂った方が楽ですよ?」


コイツは倫理や道徳をお母さんのお腹の中に置いてきたらしい。


これ以上部屋の前にいられると本当に精神が崩壊しそうだ。

ここは一つ、懐柔策を出した方が良さそうだな。


「なぁメアリー、この後時間あるか?」


俺がなんの気なく言うと、メアリーは一瞬きょとんととぼけ、そのあと頬を一気に紅潮させた。


「まさか……!」


俺は一つ決意を固めるように呼吸を整える。


「––––デートに行こう」


俺は決意を込めて彼女に言った。










「とても面白かった!ネイキッドキングVSスカイシャーク〜シャークリユニオンの野望〜……とても良いタイトルね!」


タイトルうるさっ。


「内容はB級映画みたいだったけどな」

「特にスカイシャークが復活して海に潜った後ダンゲルが海パン姿になって銛を使って倒そうとしたシーンは最高!」


そういうわけで、俺はメアリーと劇場に来ていた。


彼女は楽しんでいたようだがその時俺は一体何を見せられているんだと混乱していたな。


それに、俺は映画や劇といったものは好きではない。

いや、好きだったっと言うべきか。


俺が子供の頃、大好きな人気ヒーローの映画が上映すると言うことで、ウキウキ気分で映画のチケットを購入し、ベストな座席で映画を見ようとした。

だが、評判が良いものは大勢の人間が観に来るものだ。

生身の人間ならざるものも。


…そう、幽霊だ。奴らはチケットなど買う必要がないため、いつでも観たい時に観にくる。

だから館内はぎゅうぎゅう詰めで、クラブのパーティーと言っても差し支えないような密集地帯だった。


知らないおっさんの背中を観ながら映画を観なければいけない気持ちが分かるか?


そんな状態で観れる訳もなく、俺は映画館が嫌いになってしまった。

今日見にきた劇も例外ではなく、内容は明らかなB級映画なのに、劇場内は人と幽霊のギチギチの密着状態だった。


あの手の映画を作ったヤツは絶対俺達と同じ世界からやってきたサメ映画好きの人間だろう。


「次は何をする?何処に行く?ナニをする?近くに休憩所があるから寄っていきます?」


積極的過ぎだろ。


お誘いは後ろ向きに検討して断っておくが、今日はデートをするためだけに来たわけではない。


もう一つの理由、それは……武器調達。


俺は皆と出遅れて武器を買っていなかった。

今頃彼等はモンスターの討伐依頼を受けて一生懸命働いている事だろう。


正直言って俺が魔王討伐なんて出来ると考えていないし、やるつもりもないが冒険者として登録した以上、モンスターを狩って日銭を稼がなければ明日はない。


女神からスマートフォンに金は送金されているがそれが尽きるのも時間の問題だ。

スマホの中には20万ジールという単位のこの世界の金が入っていたが、このままニート生活を続けていればいずれ金が尽きる。


「次は武具屋だ。冒険者なのに武器を持っていないのはさすがにまずいからな」

「あなた武器必要あります?あんなに凄い能力があるのに……」


メアリーはなぜか分からない、と言った表情で聞いてくる。

たしかに俺の能力も力はついてきているが、幽霊を怖がらない奴に当たったら一発で終了だからだ。


せめて剣の一本でも持っておかないと不安になってくる。


数分歩くと、目的地にたどり着いた。

『リーサル・ウェポン』と書かれた看板が見える。

名前からしてとても良い武器がありそうだ。

店主は刑事だろうか。


カランコロンと心地の良い音が聞こえた。

一瞬カフェに間違って入ったかとも思ったが、中に入ると様々な武器が展示されていた。


ふふ……いいなこういう場所は。

男心が燃え上がりそうだ。

剣、盾、鎧、刀、弓、数え上げればキリがない程の豊富な武器がそこかしこにあった。


見ているだけで小一時間は軽く過ぎてしまいそうだ。


「よぉらっしゃいらっしゃい!お客さん新人冒険者かい?」


俺が武器を見ていると褐色肌で顎に髭を生やした気のいいおじさんが俺に話しかけてきた。


「ああ、武器を探してるんだ」

「ならおすすめがあるぜ兄ちゃん!コイツは魔力がたっぷり詰まったマナタイトっつー石で丁寧に研いだ芸術品だ!ああコイツにならケツを掘られてもいいぜ!」


そう言って俺に一振りの剣を持って笑顔で俺に宣伝してきた。

掴みやすい柄、豪華な装飾、透き通るような銀色の刃、見ていると俺の顔がイケメンに見えるくらい輝いていた。


「へぇ……いくらするんだ?」

「60万ジールだ!こんなに破格なのはウチくらいなもんよ!よく喋るブス女のアソコより安いぞ!」


た、高い!

あとさっきから例えが汚すぎる。


俺の残金は18万ジール、明らかに足りない。

値下げ交渉をすれば買えるだろうか。


「あぁ、何盟友?お金がない?そりゃあトゥーバッドだぜ。

そんな盟友に合う武器は……これなんてどうだい?」


俺の金がない状況をどうやって判断したのか店主さんは俺に代わりの武器を持ってきた。

まぁ、しょうがないか。

人生は妥協だと、つくづくそう思う。


店主さんが見せてきたのは、錆に錆びまくり、抜刀できないのではないかと思わせるくらい朽ち果てた剣だった。


「妥協するにも程度ってもんがあるだろ」


俺はつい、うっかり突っ込んでしまった。

だが店主はいやいやと首を横に振った。


「この剣はな……かの有名なダンゲル国王が使っていたと噂される伝説の剣さ!こんな見た目のせいで誰も信じちゃくれねぇけど、俺の親父がどうやってか極秘ルートで手に入れたんだよ!」


嘘くさい。

こんなものが伝説の王の武器だと?

まったく馬鹿馬鹿しい。


「なぁアンタ……」

「ん?」


不意に俺は声をかけられた。

宙に浮いていることから幽霊だろう。

男の幽霊が俺にこそこそと内緒話のように語りかける。


「ソイツ適当な事言うから信じない方がいいぞ」


幽霊もコイツに呆れているのか。

もう別の店にしようかな………


俺がそう思って別の武器を見ようとしたその時、


「ハァ……コイツモカ………」


ふと、誰かの声がした。

店主でもメアリーでも今の幽霊でもない、別の男の声だ。

酷く淀んで覇気がない、聞いていてこっちが滅入るような、そんな男の声だった。


「やっぱりいらねぇか。まぁそうだよな。俺もこんなガラクタいらねぇから素人あんちゃんに売り付けようと思ったけどダメか……」


やっぱりガラクタだと思ってたんじゃねえか。

客をナメるな。


俺が内心地味にイラッとした、その時だった。


「いい……!これがいいわ!これにしましょうカナデさん!」


なぜかメアリーは朽ち果てた剣を御所望した。


彼女は瞳を怪しい赤色に染めながら、これがいいこれがいいと言い続けた。

一体何を根拠に………


「おお、姉ちゃんこの武器の良さを分かってくれるのか!いやぁ実はこの武器は聖剣エクスカリバー」


黙れ。

お前の言葉には絶対に騙されんからな。


「カナデさん、この剣……呪いが掛けられています」


とメアリーが気になるような事を言った。


「呪いだって?」

「そう。しかも上級の呪いね。だからこの剣は錆びて今にも朽ち果てそうなの。私なら解除出来るかもしれない……」


とメアリーが真剣そうな表情で言った。


彼女は呪いに関してはエキスパートだ。

だから呪いにも詳しい。

もしかしたら、掘り出し物の可能性もある。


一か八かで賭けてみるのも一興か。


「なぁ、この剣はいくらだ?」

「あぁ?そんなもんウンコだウンコタダでい……えっ!?買ってくれんのか!?」


今ウンコって言ったよな。


「まぁそうだな……1万ジールでどうだい?」


こ、コイツ……さっきまでめちゃくちゃ罵倒してたくせに金だけは取ろうとしてやがる……まぁ、周りの武器に比べたら格段に安いほうか………


「分かった、それで良いよ。買わせてくれ」

「いやぁお目が高いな兄弟!アンタならその価値が分かるって信じてくれたよ!」


お前の武具屋には絶対来ないからな。

あとだんだん呼び名がグレードアップしてないか?




こうして、俺達は今日のデートを終わらせて、各自の家へと戻っていった。


今日は疲れた。

明日だ、明日ギルドに行ってクエストを受けよう。


外を見ると空は夕暮れ。

太陽が既に沈みかけ、夜の顔を見せる寸前だった。


「はたしてこんな剣が伝説の剣なのか……?」


俺は疑問に思いながらも錆びた刀身を見る。

鞘から抜くのにも一苦労した剣は風化を重ね、とても剣とは言えない見た目になっていた。


「それにここ見てください……呪詛が貼られてあります」


確かに、メアリーが言ったところには謎の言語が書かれておおっと?


––––いたのか。


各自の家に帰ったと思ったら俺の部屋にいつのまにかヌルッと俺の部屋に入っていた。

合鍵とか普通に作ってたらどうしようかと、俺は戦慄する。


「この剣の持ち主、どうしてここまでするのかってくらい呪いを何重にも掛けているわ。この呪術師は相当心が病んでいたみたいね……」


多分その呪術師とやらは絶対にお前にだけは言われたくないと思うぞ。


「闇の精霊よ、呪われし命よ……此の朽ち果てた剣の呪縛を解きたまえ…!」


メアリーは剣に手をかざし、何やら呪文を唱え始めた。

すると、剣から暗い紫色の光が溢れ出し、部屋中は剣呑な雰囲気に包まれた。

剣はガタガタと震え、内から何か邪悪なものが飛び出しているように見えた。

ドクロのような物や悪魔のような顔など、徐々に封印が解かれているように見える。


俺は幽霊が見えるが、幽霊以外のものもたまに見えることがあるのだ。

明らかに人とは思えない物や、その土地の神など、幽霊とはちょっと違う別の存在。

今回の場合もそれに該当するような類の物だった。


「あっ、もうちょっと!もうちょっとで解けるわ!」


メアリーは嬉しそうに言った。

呪いを解いている彼女の姿は、いつもの倫理観ゆるキャラくんみたいな姿は無く、一人前の呪術師のようだ。

彼女の横顔は危険な雰囲気を孕みながらも、とても綺麗に見えた。


「もう少し……!ハアァァァァァァァァァァァァ!!!」


メアリーが渾身の気合を入れた瞬間、錆びて朽ち果てた剣は徐々にヒビが入り、やがて爆発するかのように、光が放たれた。


閃光手榴弾のような眩い光で圧倒されながらも、俺とメアリーは呪いを解き終わった剣を見た。


その剣は、今まで見たどんな刀身よりも白く、見た者全てを浄化してしまうような、この世のものとは思えない、芸術品のような代物だった。


「凄い…綺麗……」


メアリーはうっとりするように観察する。

俺も彼女と同じ感想しか出ないくらい、魅了されていた。

これは……本当にいい買い物をしたかもしれないな。


「ふあぁ〜………やっと出られたぜ………」


俺達が剣だけを凝視していると、何やら近くから誰かの声がした。

さっき聞いた同じ声。

だがくぐもってなく、そして聞いていて不快にならない声の主に、俺は後ろを振り向いた。


「よお、よくぞ封印を解いてくれた。俺はサンゼーユ国の前王、ダンゲル・サンゼーユだ」


そこにいたのは自らを王と名乗る布一枚纏っていない、全裸のおっさんだった。

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