仮面のはずし方を忘れて

晴信

第1話

「おはようございます」

「おはようー」

今日も校門の前で生徒会や教員たちが朝の挨拶をしている。


ただ挨拶をしているわけではなくここで服装の点検や健康状況の確認、また生活態度の評価のためなど様々な理由のもとの取り組みではあるが…


「おはざーす」

生徒会役員とは名ばかりの鈴木晴すずき はるはとりあえず挨拶のような言葉を発する。周りに教師がいるのにこのような態度、しかしその適当な挨拶に気づく者はとても少数である。

教員だって人間だ。朝は授業の準備や生徒が知らないような業務もある、朝が弱い人だっている。一人の生徒の挨拶程度に構うほどの余裕はない。

まぁ、それでも気にしてくる人がいるのが多くの人が集まる場である学校、社会なのだろう。


「鈴木君、朝の挨拶くらいちゃんとしなさい。」

生徒会副会長、楢崎琴子ならざき ことこがまるで小さな子供に諭すような注意をしてくる


「はーい、でも先輩たちは凄いですよね。こんな朝早くからあまり知らない生徒に対してもしっかり挨拶されていて」

気の抜けたような返事をした晴はな眼差しで楢崎先輩、そして少し離れたところに立つ生徒会会長の大池桃華おおいけ ももかを交互に見ながら言う。


「確かに知らない人も多いけど、学校に通ってる時点で仲間だよ。仲間なら挨拶をすることは当たり前だし、困ってるなら助け合わなきゃダメだよ。」

「まぁ、そうですね。実際お2人のおかげで他の役員も活動しやすいし。先生方も手間がかからないから大喜びですもんね。」


「もう、そういう嫌な言い方しないの」

楢崎先輩はそういいながら頬を膨らませる。そんな顔を登校しつつ見れた生徒たちは一様に笑顔になりその先にいる会長に挨拶していく。


「そんな朝から元気がない晴君は今日の放課後は桃華のお手伝いをすること。」

楢崎先輩は少しニヤつきながらそう言い放つ

呼び名が晴君になってることにはとりあえずスルーしておく

「…別に放課後は暇なのでいいですが会長は嫌がりそうだなぁ」

「そんなことないよ、あんまり顔に出ないけど晴君がいる時とといない時だと雰囲気が違うもん」

「はぁ、そんなもんすかね」

そんなものよ、といいつつ俺から離れていく。どうやら大池先輩に放課後の件を伝えに行ったようだ。楢崎先輩から何か言われた大池先輩はこちらをギロッと睨みつけると何事もなかったかのように挨拶を始めた。


「はぁ、とりあえず今日は帰りが遅いことだけあの人に伝えておくか」


そういいつつ空を見上げると雲ひとつない青い空がそこにはあった。


「このまま晴れててくれればいいけど。まぁ天気が変わるようならこっちがうまく対応すればいいか、」


県立の高校に通う鈴木晴《すずきはる》はそんなやる気がない、だらしない、ただの生徒会役員である。特に役職もなく、ちょっとなにかが抜けてる高校2年の男子生徒。楢崎琴子にいつも弟のように可愛がられ怠けているといつも指摘される。


そんなどこにでもいるような男子生徒だ。


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