退廃、異常、蠱惑、そして死の匂い

 まず序章を読んでみてのレビューです。

 強い掴みの始まりが目を惹くが、なにより蠱惑的なのは立ち込める死の匂い。学園での日常シーンや、飲食、日頃の垢を流すお風呂の場面でも、退廃的な死の匂い……傾いだ雰囲気が、かぐわしく漂ってくる。
 ともすれば、描写されている光景の外側では世界が滅んでいるかのような……と表現するのは少々大袈裟かもしれないが、前述の何気ない日常や生命活動らしい場面でも死の概念が視界でちらつき、影を大きく落としているからかもしれない。

 異常を浮き彫りにするための日常というよりかは、異常が日常と等価値で起こっているというような印象を抱いた。
 生と隣り合っている死。当たり前が異様に際立っているものの、しかし生々しさといったエグみの不純物を含まず、美しく軽やかに流れていく。それがなにより異常だというのに。

 退廃、異常、蠱惑、そして死の匂い。
 これらのキーワードが気になった方は、是非とも序章を試しに読んでみてほしい。

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