第7話 水族館


江ノ島水族館に着いた。

チケットを買って入場する。


「水族館なんて小学生ぶりかな」

「2家族親子4人で小学2年生のときですね。懐かしいです。まーくんは迷子になって泣いていた記憶があります」


そんなことは思い出さないでいいから。稲川さんとか笑ってるから。


 

水族館の中は浅瀬や深海など魚のいる場所によっていくつも区切られていてなかなか面白い。

サメのコーナーも世界中のサメの標本や、生きてるサメに触れるコーナーもあった。

サメの肌はざらざらしていて頬ずりしたら痛そうだった。


「すごいね。由香もサメ触った?」

「ちょっと怖かったけど触ってみました。おとなしいのでびっくり」


そりゃ凶暴だったら触れないよ。


「あと、また小林さんの胸を凝視してましたね。今晩はお仕置きです」


のぉぉぉぉぉ。

だって屈んだらお胸がたぷんとなるから凝視しちゃうよ!

稲川さんは見たけど凝視はしてない。だってお胸は揺れなかったから。


「まったく、まーくんは病気です」

「由香が病気を治してくれよ」


まったくもう、まったくもう。プリプリ怒るなよ。笑顔笑顔。

あ、笑顔で怒るの怖いからやめて。

 


深海魚コーナーにきた。

真っ暗の部屋に水槽があり水の中で何かが光ってる。

あ、これ魚なのか。

水槽にくっつくように中を覗いてた僕の肩に、小林さんが顔を乗せてきた。


「何か光ってますね。あれが深海魚ですか?」


「うーん、暗くてよくわからないね。魚みたいだけどねー」


魚よりあなたのお胸が背中に当たっています。

当ててるの?わざと?

マシュマロみたいにふわふわで暖かいお胸。

 

「かすかに魚のシルエットが見えるよ。目を凝らしてみて」


さらに一歩前進の小林さん。背中でお胸がつぶれてますよ?

 

「うーん、よくわからない。遙はわかる?」


横から稲川さんが顔をだす。体をぴたっと俺につけて腕を抱く感じ。

密着具合がやばいです。腕に感じるかすかなふくらみが禁断の果実がごとく。愛でたい気持ちになってきた。


「まーくん、何してるの?」


後ろから由香の低い声が聞こえた。

小林さんと稲川さんは笑顔で次行こうと先に進んでしまった。


「深海魚見てたんだよ。暗くてよくわかんないけどこの水槽で光ってる」


由香は水槽を覗き込み、

 

「あの光ってるのがそうなのね。てっきり魚じゃなくて女性の胸でも見ているのかと思った」

「何バカなこと言ってるの?そんなわけないでしょ」


見てたんじゃない。体全体で感じていたんだ。

嘘じゃない。だからセーフ。

じゃあ次に行きましょうと腕を引っ張られ、由香に連行された。



岡本くんがイルカのショーが始まると言うので、野外の巨大な水槽に移動した。

水槽の周りに階段状の席があり、雄介は最前列に座っていた。

僕たちに気づいた雄介が大きく手を振り、こっちに来いとアピール。


「岡本くん、一つ聞きたいんだけどいいかな?」


岡本くんは振り返り、何?という顔でこちらを見た。


「前列の席や床が濡れているんだけどさ、あれって水が掛かるの?」

「あ、そうだね。濡れるかもしれない。イルカ跳ねるしね」


僕たちは雄介を残し、全員で中段の席に座った。

こっちこいと手で合図する雄介を逆に呼ぶ。


「あの席濡れるからこっち座りなよ」


由香の横の空いてる席を指差した。

雄介は、濡れるのが面白いのにと言いながらも由香の隣に腰掛ける。

まんざらでもない様子。


「着替えないし、女の子もいるからね。濡れたら大変だよ」


僕の言葉に小林さんも稲川さんも頷く。

びちょびちょの女性陣も見たいが、他の男共に見せるのは嫌だ。

そんな我侭な僕の意見だったけど、女性には紳士に聞こえたようだ。

濡れて透けた服とか最高だろ。

でも紳士な僕は我慢、我慢。


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