第48話 全肯定甘々恋人エルネシアちゃん

 村の開発予定では海辺に漁港部分を、内陸の山の手前に農村部分を作る南北に広い村になる。

 さらに東西は東に大河とダンジョンが有るので伸ばせないが、西には何もないのでかなり土地を広げられる。


 災害や侵略等を懸念して開発予定地には今まであった防壁を撤去、高さ300メートルのロックウォールの防壁を全方位に作り直し、通行用の穴だけ空けて管理は村に任せている。

外様の来訪についても考えないといけないが、今は通路に門やドアは設置されていない。

100人村ではいつか限界が来るので、まだまだ新住人大歓迎状態なのだから。


 村の作りは防壁内の中央に家屋を集める事で、保管庫から食料や各種材料等の持ち出しを楽にしている。

 保管庫は種類で分けてあり、肉、野菜、果物、穀物、その他等で、これら食料は地下に氷室として作り朝夕魔法で氷を追加したり熱操作で適温に冷やしている。


 非食料なのは木材、石材、金属、皮類、糸布類の衣食住の衣と住。

 ジャージに気付いてからは倉庫の中身を1度家で全種類出して、村の保管庫にも入れるかどうかの話し合いがされている。

 30階のチーターのドロップアイテムは靴、靴下、腕時計、スポーツウェア、サングラス、帽子等のジャージよりも運動に適した服等で、運動用の靴では土が入るから農作業には適さないが、漁師や狩人にはしっかり踏ん張れる靴というのは重宝されて話題になり、履けない者以外は履いているようになった。

 そんな保管庫を通り過ぎて村長宅の玄関ドアをコンコンと2度ノックする。


「はーい、今出るよ」


 返事から少しして出てきたのは、金髪にエメラルドの瞳をした30歳前後の中性的な耳長イケメン、村長のジェロニモだ。


「やあシバ、それにエルネシアも、中へどうぞ」

「土産だ、邪魔するよ」

「お邪魔しますね」


 ダンジョン産のワインのビンを渡し、玄関で靴を脱いで上がる。

 続いてエルネシアも上がり、玄関を閉めたジェロニモも上がってきた。


「あら、いらっしゃい。お客さんだと思ったらシバ君とエルちゃんだったのね」


 奥の部屋から出てきたのはジェロニモより少し小柄で同年代の美女、彼の妻のミロだった。


「ああ、ちょっとジェロニモに話しを通しておこうと思ってな」

「ミロさん、お邪魔してます」

「2人共ゆっくりしていってね」


 テーブルに置かれ差し出されたコップには、相変わらず酒が入っている。

 ミロは酒にめっぽう強くて酒好きのウワバミなため、元の風習の15歳以上の成人相手には決まって酒を出す悪癖があるのだ、それも果汁で割って飲みやすくなった強い酒を。

 村では陰でミロの事は、エルフの姿に生まれたドワーフだなんて呼ばれ方をされているらしい。


 エルネシアもこの家に初訪問の時にその酒を美味しいと飲み干してベロンベロンに酔っ払い、その日は話しにならないと帰ったものだ。

 家まで背負って帰る途中も強く抱きついてきたり、耳元で愛を囁いたり舐めたりして甘えてきた。

 ならばと帰宅してからは思いっきり甘く致したのは良い思い出だ。

 思えばあれからか、エルネシアの甘えん坊に拍車がかかったのは。

 今もイスを寄せて左隣に座って、左手に指を絡めてきては両手で握って揉んだり指でさすったりしてきている。


「それでシバ、今日はどんな用向きなんだい?」


 ワインをミロに渡して座りながらジェロニモが問うてきた。


「俺の使役したウサギモンスターが畑を守ってくれてるみたいなんでな、近くに専用の家か何かを作ってやれたらと思ったんだが、勝手に作るとジェロニモが考えている村作りの計画の妨げになるだろう? だから断りを入れて、どこなら作ってもいいのかを聞きに来たんだよ」


「なるほど、では現在の畑の東側が石だらけで畑を広げられないので、そこなら自由にしてもらっても大丈夫だよ」

「了解、住人への通達よろしく」

「うん、任せておくれ」


 磨きに磨いた収納技術でコップの酒をジュースと入れ替えてエルネシアと飲み干す。

 入れ替えた酒は家で20歳越え組に酒の席の時に出そう。

 うちは基本的に俺の定めたルールで動いているので、成人はみんなに合わせて15歳からだが、飲酒は20歳としている。

 20歳未満が俺とエルネシアとミツミしか居らず、ミツミもまだ飲んだ事がなかったので問題なく通ったルールだったりする。


「んじゃ、なんかあったらまた来るくんよ」

「いつでもおいで、待ってるから」

「またおいでー」

「はい、お邪魔しました」


 ジェロニモとミロに挨拶してから村長宅を出ると、その足で畑の東へ向かう。

 珍しく歩いているのにエルネシアが手を繋いできた。

 ふむ……


「エルネシア、もっと素直に甘えても良いんだぞ?」

「えっ、良いんですか? じゃあ是非!」


 試しに許可を出してみたら本当はもっと甘えたかったみたいで、指を解いてそのまま左腕に抱きついてきた。

 エルネシアに可能な今の精一杯のオシャレ服に、程良いサイズの双丘に包まれる左腕。

 村では不要だったからと使ってなかったが、たまらず特性化して左右2腕3腕を出すと、左2腕でエルネシアの腰を掴み、左腕3腕で尻を掴んだ。


「キャッ、あんもう、エッチなんですからぁ」


 えっ、いいの? これって許されちゃっていいもんなの!?

 チャラ男が自分の女の尻を揉んで歩くなんて、2次元の創作物だけの事なんだと思ってましたー!!

 でもこのままだと、たまらなくなりそうなので左腕2腕3腕の両方で腰を掴んだ。

 エルネシアは俺を見上げてちょっと残念そうな顔をした。

 ううっ、我慢我慢。


「そんな顔しないの、俺からしといてなんだけど俺も我慢してるんだから。日中は日中でしかできない楽しみ方を、デートをしよう、あっちの方は夜にたっぷりとな」

「はいっ、えへへー」


 身長が僅かに俺が高いだけなので腕に頬をくっつける事はできない様だったが、頬ずりしたり肩に顎を乗せたりして甘えてくる。

 時折キスをしながら畑まで歩いた。

 時々エルネシアの左右の尻を揉んだりもした。

 心配させなきゃ全肯定甘々恋人エルネシアちゃんは本当に愛おしい。

 苦労している分、些細な事で幸せを感じるなと思った休日の午前中だった。

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