Cupid of New World

燈 歩(alum)

1.頼りになるなぁ

 俺は今、俺史上最大に悩んでいる。一生日本から出ることも、まして実生活に必要になることなんてサラサラ考えていなかった。だから早々に捨てたのに。


 それなのに、だ。


 この前大学でうっかり財布を落としたんだが、それを拾ってくれた女の子が超絶可愛かったんだ。どうにかして連絡先を手に入れたものの、問題は別にあった。


 彼女はカナダ人だったんだ。


 何が大変かって? そりゃもう言葉の壁よ。そう、俺は中学の時に英語を捨てていた。いや、こうして大学生になれたわけだから紙の上での英語は勉強した。したけども。受験が終わると全部流れていった。頭の中にはサンキューとかプリーズしか残ってない。


 その瞬間に俺は俺の人生を呪ったね。なんでこういう想像力が回らなかったんだ、中学の俺。英語担当の教師がクソなババァで嫌いだったんだよな。うん、でも今、俺、涙目。


 英語の教科書を引っ張り出してくるか、本屋に走って簡単ネイティブ英会話の参考書を手に入れるか……。古き良きエアメールならそんな時間もあるだろうが、今、この時に、タイムリーにコミュニケーションを取る現代では、自分の脳みそを鍛えるまでに時間がかかりすぎる。


 そんなわけで、俺はグーグル翻訳に頼ることにした。便利な世の中に生まれていて良かった。こいつがいればとりあえずはなんとかなる。


 さて、彼女に最初に送るのはどんな内容にしよう。

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