NEXCL・ONLINE

daidroid

クソゲームからの離脱

 西暦2020年




 この当時、まだ無名だったアーリア・サイバーテクノロジー社が生み出した革新的が次世代新型ゲーム。

 俗に言うフルダイブ型VRMMO『NEXCL・ONLINE』(NO)だった。

 その存在はある日、突然唐突に某有名な動画サイトにPVが告知され、その内容に皆が度肝抜かれた。

 会社曰く、ゲームの謳い文句は以下の通りだ。




 1つ、ゲームの世界では現実の1800倍以上の速度で時が進む。(今後、更に速度を上げる事も可能)


 2つ、人の思考のパターン化に成功した事で従来のエネミーとは一線を介したよりリアルなエネミーと戦う事ができる。


 3つ、現実の世界を忠実に再現した事で現実と相違ない生活を行え、現実で行える事は全て行える自由度の高さがある。




 そんな物、誰もが夢物語の技術だと初めは思い、現代の技術水準では再現不可能なゲームでどこの馬の骨とも分からない会社の言う事なんて信用できない、眉唾だと思った。

 99%のリアリスト達は信じなかったが、残り1%の水郷者とも訳有り人とも呼べる人間達が色んな思いの希望に縋るようにそのゲームを手にした。


 専用のゲーム機の価格が暴挙とも言える15000円であった事もあり、「まぁ……15000円なら……」と思い、買っても期待を裏切られても損をしないと判断、先行販売されたβ版を手に取り、世界に入り込んだ。


 そして、それが真実だと気付くまで現実世界ではそんなにかからなかった。

 試しにログアウトしてログイン時の時間を測り計算しても本当に60分のプレイで秒針が2つしか進んでおらず、更にゲーム内でもネット環境に繋がっている事もあり、この極めて現実とも言える精巧な作りのゲームの動画は現実時間で5秒の間に何万個も投稿され、先行発売初日が終わる頃にはこのゲームの存在が世界中で認められ、誰の目に見てもそれが真実であったと周知される事になる。


 そのリアリティを目の当たりにして世間の評価は一変したと共にアーリア・サイバーテクノロジー社はβ版の引き継ぎが可能な正式版発売を発表、正式版発売初日から1000万人のユーザーを獲得していた。


 このゲームはいわゆる、リアルロボットアクションゲームであり、ゲーム説明によると“ネクシル”と呼ばれるロボットをカスタマイズして操作するゲームらしい。

 ただ、今までの旧世代ゲームと違い俯瞰視点ではなく仰視点である。

 これは最近のゲームでもそれらしいシステムが付いてはいたが、このゲームの相違点としてはまるで本物のコックピットに乗り込み、体を動かす様に操作可能な異次元の官能性を持ちつつ、実際にコックピットのボタンやレバーを操作するリアリティも定評だった。


 他にもロボットゲームとは思えない魔術と呼ばれる要素が含まれている事だ。

 世界観設定によると量子力学が一定以上発達した世界では”魔術”と呼ばれる技術体系が画一化されてしまうと書いてあった。

 ファンタジーと言うよりはSFに近い魔術と言う事らしい。

 ロボットであるネクシルの機体パラメータなども独特で機体スペックも重要だが、このロボットはどうやら、搭乗者の身体スペックを機体に反映するようだ。


 これはゲーム付属のダイブギアと言うヘッドホンタイプの装置から身体情報や心理状態を数値化してそれは機体スペックに反映するそうだ。

 例えば、身体能力が高ければ、機体の膂力や柔軟性に影響、運動性に大きく反映され、忍耐力が強い人間は魔術耐性や魔術を使う上で必要なWN(俗に言うMPもしくは神力と呼ばれる)に大きな差が出る事で機体の出力にも影響を与え、因果力と言うステータスは“運”に影響するらしいが、それがロボット戦にどう影響するのかよく今のところ詳しく把握している者はいない。


 このゲームの魅力はそれだけではない。

 正規版発売前に公開された情報の中に“ゴッド・パーツ”と呼ばれる超ド級アイテムの存在がユーザーを引き寄せたファクターの1つだった。

 公式サイトに「運営仕事しろ!」と指摘される事を覚悟した上で作ったハイスペックのパーツが存在するらしくそのパーツは決まった形がある訳ではなくユーザーの情報などを読み取り、ユーザーのユーザーによるユーザーの為のパーツに変貌すると言うシステム仕様があり、それを探す事がゲームの醍醐味にもなっている。


 ロボットが好きなら誰もが憧れる実質的な専用機を造れると言う仕様に憧れを抱くだろう。

 それに加え、このゲームの素晴らしいところはゲームとは思えない自由度の高さにもある。

 β版の中では工業用3Dプリンターと言う近未来的な加工道具が揃っており、それにより好きなパーツをプレイヤーが作れるようになり、ゲーム初期から存在するパーツは1000種類以上とされており……しかも、その武器全ての現実的な設計図などが存在すると言う極限のリアルを追求した徹底さもあり、その自由度から実質、無限のパーツを組み合わせ、更にはプレイヤー自身が創造する事が可能となっている。

 その拡張性と自由度の高さが人気に拍車をかけたが、他にもう1つこのゲームならではシステムとして“思考加速”が可能な事だ。


 これにより現実の1秒が1800倍になると言う怪物仕様となっている。

 実質、30分のプレイが1秒で行え……しかも、経験した事はちゃんと引き継げると書かれていた。

 この特性に着目して受験間近の受験生達がゲームを予約、在庫が一時期品薄状態にまで陥ったほどだ。

 しかも、このゲーム専用のゲーム機とダイブギアは合わせ、15000円なのでこのゲームの購入に更に拍車をかけた要因だった。




 ◇◇◇




「さて、会社からの新情報はこんなものですか?」




 そして、この男、白井・修也は発売された正規版NOを手に取っていた。

 修也は親類とは離れて暮らす1人暮らしの高校2年生だ。

 何故、親類と離れているかと言われれば“病的な理由”からだ。

 NOを手に取ると自然と過去の事が想起される。




(幼い頃もわたし……は何かがの中に入り込み幼い時から魘され、恐怖と絶望の中で日々震えながら日々を過ごし半ば、うつ病で何をするにもやる気が出なかった……ゲームを除いては……)




 だが、親は頑なに「ゲームをするやる気があるならお前は鬱病ではないやる気だせ!」と無いモノを出せと無茶ぶりを繰り返す両親で幼少期から教育過剰だった事もあり、午前2時まで勉強させられる事が多かったが僕はその努力をテストではいつも発揮できず、いつも両親に殴られてばかりだった。

 それが原因で統合失調症にもなった。




 そして、修也の中の何かは言い知れぬ殺人衝動を駆り立て修也を呪い、操ろうとするのだ。

 何度も抑え込んだが言う事を聴かず寝る間もなく修也は苛まれた。

 だから、修也は祈ったのだ。




 助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて助けて。




 だが、何度も願っても願いは届かず虐待は続き助けてくれる者なんていない。

 この世には悪魔しかいないと思った時にある転機が巡った。

 修也への虐待が近所の人に発覚、児童相談所に保護されその直後、両親は事故に遭い他界、大量の遺産が修也に入った。

 本来なら親類がその遺産を掻っ攫うのが定番なのだが、修也の遠い親類の名乗るレベット・アシリータと言う外国の方が財産を管理してくれたおかげでその危機を脱した。


 そして、修也は医師からPTSDと診断され、極度の対人恐怖症であると認定され、人間との接触を極力避けるように言い渡され、克服の為の訓練を受けながら生活し始めた。

 その辺りからだ。

 修也の口調は”僕”から”わたし”に変わった……それから8年くらい経って高校にも最低登校シフト表を作る程度回復はしたがやはり、修也は人間が嫌いだ。


 だから、修也は今日もゲームに奔っているのかも知れない。

 この世と言う無秩序で定まったルールもなく70億以上の人間が好き勝手に振る舞うクソゲームから離脱し隔離された世界に赴く為に……修也はこうして、β版から引き継いだアカウントを使い、ログインした。

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