第0.03話 宣託(センタク)

 「何度も言うが、チョット待て。

 近い将来、魔族界をべる……だって?

 魔族界の王の……孫って……、ホントなら超エリート様じゃねぇか。

 それが何の因果でこんなトコに……?


 ――それより、魔族界って何だよ?

 イキナリ過ぎて付いて行けんぞ。

 そもそも今のハナシが事実だなんて俄かにゃ信じらんねぇって。

 朝も早よからカンベンしてくれ……」


 「――【……、

 あの忌まわしき《魔族堕ちザ・フォールン》を……。」


 初めて聴く口調だった。

 厳かさと緊張感がその場を包んでいくのを肌で感じた。

 我知らず生唾をゴクリと飲んだ。

 そうだった。


 「

 このまま多くの《魔族堕ちザ・フォールン》が生み出されれば喰われるニンゲンも確実に増えるのが必定。

 そうなればこの世界に生きる者、――……。」


 まるで巫女の宣託の様にその少女の言葉は神々しく、心に突き刺さった。

 なんて思うのはオカシイよな。

 だけど、なぜかがあると感じた。

 普通ならこんな突拍子もないハナシを言葉通りに信じるわけないんだけど。


 「確かに昨夜その《魔族堕ちザ・フォールン》ってヤツを見たし、お前さんの言ってる事が百歩譲って丸ごと正しいとしてさ……。

 俺に何をさせたいんだよ?

 たいした事出来ないと思うよ、ソッチ関係の知識も無いし。」


 「――……はァッ。

 あれほどの【】であの《魔族堕ちザ・フォールン》を狩っておいて今更何を言うか?

 汝には引き続き、このイリス・ダークシュナイダーの刃となり、《魔族堕ちザ・フォールン》とニンゲンを堕とす魔族を狩ってもらいたい。」


 「……俺が……あの、いや……流石にそれはないだろ?

 俺があのバケモノを狩っただって……?

 いやいやいや、それはナイわー。

 俺のドコにそんな【】があんだよ? 頼むぜ全く……」


 「憶えておらぬか……。

 確かにあの時は勝手に汝の【】を使わせてもらったから栓無き事かもな。

 だがこれは事実だ。

 汝の身体と心に眠る古き【】、あれは奴らに対し極めて有効な武器となるのだ。」




※BGM「The Black Book」 / Hellion

 


 

 


 

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