第0.01話 目覚め(メザメ)

 次の目覚めはヒドかった。


 まるで粘度の高い沼の底からユックリと水面に引き戻される様な感覚……。

 今までに味わった事のないモノだ。

 似てると言えば、朝までシコタマ深酒して気分よく寝てたのを無理矢理に起こされた感じだろうか。


 とにかくサイアクの気分だった。


 昨夜ゆうべ、俺は何してたんだっけ?

 こんなになるまで飲んだくれたのか?

 

 ――――ダメだ。全く思い出せない……。

     

 頭がマッタク働かない。

 オマケに酷い気分だ。

 なぜ目覚めた?

 もっと寝ていたかったのに……。

 今、何時だろう?

 今日は仕事どころじゃないかもな……。



 「時間は、午前あさ5時12分。

 思ってたより早く起きたのね。」


 俺のユックリな思考を断ち切る様な声がした。

 聞き覚えの無い、少しすご味のある声だった。

 応えようとしたが頭と同じで口も回らなかった。

 しかし……、ココはどこだろう?

 俺は独り暮らしだ。

 知らない声がするってことは、ソイツの部屋なのか?

 だけどこの声って……。


 「ココは、アンタの部屋。

 アタシが運んであげたんだから、感謝なさい!」


 そうだ! 

 この声、

 それもおそらくはまだ若い。


 ……ちょっと待て。

 ココ、俺の部屋だって?

 なんで勝手に入ってるんだよ?

 カギはどうした?


 やっと少し頭ん中がスッキリしてきた。

 体と口は……、まだダメか。

 とりあえず現状の整理だけでもしとくか。

 今はそれぐらいしかする事もないしな。


 昨夜

 ――何となく思い出して来たぞ。


 俺はいつもの様に、仕事帰りに行きつけの店で飲んでたんだ。

 そして帰り道、を見た……。

 

 これだけは自信を持って言える。

 

 正確には、人間から何か違うモノに変貌かわるトコだった。

 間違いない……はずだ。

 

 「アンタが見たのは《魔族堕ちザ・フォールン》と呼ばれる者。

 

 あのままだとアンタは喰い殺されてたか、アレの奴隷にされてた。

 だから助けた……OK?」


 のはなんでだろう?

 

 正確には出せないんだけどな。

 いや、今はそれは置いといて……だ。

 《魔族堕ちザ・フォールン》とか言ったな。

 人間のなれの果て……だと?

 

 頼まれたってあんな風にゃなりたくないもんだ。


 


 ・BGM「Golden Seeds」 / BAD MESSIAH

 

 

 


 

 

 

 

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