“破滅の美”さえも感じさせる浮き世での執念

とんとん拍子で進んでゆく会話が、かえってリアルさを引き出しており、運命の歯車がいよいよ回りだしたという予感を与える。

しがらみの多い世界であるが故に、ひと時の愛や自由などの主体性が輝いて映る。その輝きが眩しいことは、また反対に陰りを際立たせる事にもなる。

【心頭滅却すれば火もまた涼し】

しかし、ヒロインは涼しさではなく、ただ温もりを希求するのみであった、という世情にありつつも情緒的な物語。

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