変わらぬ日常と思ったら



「え、盗撮画像の売買?」

「ああ、何人か呼び出されたみたいだぞ」


おっぱいランキングでちょっとした騒ぎが起こって数日。


朝のHRが始まる前、教室の入り口でクラスでは比較的話すことがある、ちょっとチャラ男な矢島幸人(やじま ゆきと)に話しかけられた。


急に話しかけられた理由は矢島も俺と同じくおっぱいランキングに投票していたからなのだが。


「はた迷惑な」

「だよな」


実は俺はまだ相葉に謝ることが出来ず、優依からは「相葉さんに謝るまでは、おっぱい禁止」と言われてしまっている。


そんな中で、盗撮騒ぎだ。しかも教師に呼び出し食らったのが、おっぱいランキングを始めた中心メンバー。


今下手に相葉に謝ると、変な誤解を受けないだろうか?


「でも、どうやって盗撮が発覚したんだ? おっぱいランキングなら男同士の話に出で、露見するだろうけど、盗撮の売買は売り手も買い手も隠すだろ」

「それなんだが、隣のクラスの有栖川栗栖っているだろ?」

「あ、女子大生にホテルに連れ込まれそうになった?」


俺がそう言うと矢島が苦笑いする。

有栖川栗栖。水泳部のマスコットで、個人的に女装コスプレさせたい美少年だ。

祖母が欧州出身だったらしく、髪の色が綺麗な琥珀色で、小動物系の性格なので逆ナンされることが多いと聞いている。


「その有栖川が盗撮画像と分からず、他の生徒が購入した記録媒体を拾って何だろ? と見ている時、そこを奥さんに見つかったんだとよ」

「あー、なるほどね」


有栖川栗栖の幼馴染みで、奥さんとか呼ばれている学校でも上位の美少女、藤谷詩音。


容姿が漫画に出てきそうな、ツインテールでツンデレな貧乳で、有栖川に女が近づかないように追い払っている。


「そこから、連鎖的に盗撮画像の売買が発覚したらしい」

「有栖川はそれを知らずに記録媒体を手に取ったのか?」

「噂だとそうみたいだな。記録媒体の中身が何なのか気になって、コッソリ見たら盗撮画像で、本来の購入者の生徒と鉢合わせ、有栖川が生徒に事情を聞いているときに藤谷が乱入して騒ぎになったそうだ」


運の無いヤツだな。その購入した生徒も。

恐らく、有栖川だけなら言いくるめることができた可能性があったが、潔癖な藤谷に露見してはお仕舞いだ。アイツは前に強引に友達に迫った先輩を友達から追い払い、教師に今後友達に先輩が近づかないように抗議した。

性格はかなり勝ち気もといツンな女の子だ。


「まあ、直接は関係ないがおっぱいランキングに投票しているから、呼び出しも一応覚悟しておいた方が良いかもな」

「そうだな……」


俺は深い溜め息をついた。



この日、休み時間になる度に男子生徒が教師から呼び出しを受けた。まあ、直ぐに戻ってきたが、昼休みの時に俺も呼び出された。こう質問された。


「お前は盗撮画像を購入を呼び掛けられていないか?」

「購入の呼び掛け? その言い方だと盗撮画像を売っていたヤツは、客を自分で選んでいたんですか?」


俺の問いに教師は渋い顔をして、「買っていないなら、問題ない。なにか知ったら教えてくれ」と言って俺を解放した。



うーん、一昔前の漫画とかならば、体育館裏で写真部とかが、男子生徒に一枚いくらで、販売したりするけれど。


今は薬物売買しているみたいだな。まあ、見付かれば売り手はただではすまない。


「本当に間が悪い」


相葉に謝ろうとしていたのに、相葉も含めて学校の女子達の空気がピリピリしている。


今、このタイミングで、相葉に謝ると変な誤解を生むかもしれない。


それに相葉は友達が多い、常に数人で行動している。ここ数日、俺が相葉におっぱいランキングのことを謝れなかった理由の一つだ。


「優依に頼むか?」


放課後の相葉を優依に頼んで、文芸部の部室に来てもらい、そこでおっぱいランキングのことを謝る。


優依にもフォローお願いすれば行けるか?

……でも、その場合は優依と俺の関係に気づかれるかもしれない。


気づかれないなら問題ないけど、気づかれたなら、口止めをしないと。


「はぁ……」


暫く考え、俺は深く溜め息をついて、覚悟を決めた。


放課後に相葉に手紙を送ろう。

優依のフォローはしてもらわず、一人でやろう。


優依との関係が露見する可能性は限りなく低くしておきたいしな。


こうして、俺は男としてケジメをつけにいくことにした。


ちなみに、このあと文芸部で優依と一緒に昼食を食べるのだが。


相葉にまだ謝ってないので、微妙に距離を取られた。




正直、泣きたい!!


ハグも禁止とか! マジで泣くぞ!!


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る