『31』 ビッケについて

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「四方面 美景さんについて教えてください」

「ビッケは、ハカナキプロダクションの俳優さん。『回転城の呪い』では、次男役で出演してるよ。ジャオンボーイっていう雑誌では専属モデルもしてて、『合わせ鏡の貴公子』って呼ばれてるの」

「合わせ鏡の貴公子? なんですか、それは」

 粒越さんは「ふふん」と腰に手を当て、自分のことじゃないのに自慢げだ。

「雑誌でセクシーな肉体美の写真を載せたんだけど、それが合わせ鏡を取り入れてて、ビッケの身体を四方から映したものだったの。ジャオンボーイの最高売上部数を更新したんだよ! 多分、『合わせ鏡の貴公子』で検索したらすぐ出てくると思うよ」

 ほう、なになに。『合わせ鏡の貴公子』。うわーお。これはなかなか。スタイルのいいイケメンの引き締まったボディは目に毒だ。しかもこれは、よくよく見ると下も履いてないのでは…?

「あとは、うーん。実家が美容品の輸入を取り扱っている会社でお金持ちだから、たまに化粧品をプレゼントしてくれるんだ。私はよく分からないから、全部メイクさんに渡しちゃうんだけどね! 今朝スタジオでもらったおしゃれな口紅も、あれ、どこやったかな。楽屋へ置いてきちゃった! すっごい可愛い色だったんだよ。見せたかったなあ!」

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