第16話 文明開花

善意で僕を切開して


濁点が堆積して

声紋を造立する

鈍器としての視線

痙攣する小指が

勝手にモールス信号を弾く


窓際に吊られたパレード

耳に縫いつくリノリウム

主治医の靴の音


五月蝿いなにもかも

呼吸は身体の外側に逃げ出し

巻きつくようにして

積年の実りごと絞めあげる

瞼が砕けて滲み出る

読み書きのできる記憶

僕の中の文明は

花開く音ばかりピントで拾って

一文字いちもんじに丸め込む


先日はどうもありがとう

会釈はしたけれど

蕾ごと斟酌してくる

薬品のようなあなたが嫌い

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