第13話 初めての買い物
「いらっしゃいませ〜」と英語で挨拶をする店員が言った。マスターは日本語だったのにな…。やっぱり言語は勉強しないとダメなのかもしれないな……。
小さな横幅の外見とはわけが違い、ものすごく背の高い本棚が円上に囲むように立っている。本棚に沿うように長い階段が複数造られていて、上を見上げても天井は見えない。
「今年のグラストン魔法学校2年の教科書を買いたいのですが、用意して頂けますか」
エルは近くにいた店員にそう言った。
なぜ2年なのかと尋ねたい気持ちもあったが、それは気にしない事にしよう。
「わかりました。今ご用意させて頂きます」
店員はそう言うと持っていた長細い杖を左斜め上に向けて呪文を唱え始めた。
「──必要な物よ、取り寄せよ《ネセリーズ・オーディ》」
白い光が杖を指した方に一直線に突き刺した。そして光が6つに別れ、消えた。
「お客様、本を抱えるように両手を出してください」
なんでこんな事をするんだろう、と疑問を持ちながらも阿修羅は両手を言われたように出した。
店員は杖を阿修羅の掌で振り下ろした。すると少し透ける白い大きな光が現れた。
「現れよ《アペア》」
光が飛び散った。
まるで花火を打ったかのように綺麗に咲いた。
「な、なんだこれ…っ!!」と言った矢先、阿修羅の手にはずしりと思い物が乗っている。
「す、すげぇ……本が届いたぜ…」
6冊の分厚い本が阿修羅の掌に縦に積まれて置かれていた。横に書かれている文字にはこう書かれている。
───────────────
・魔法薬学2 グラストン魔法学校
・魔法戦2 グラストン魔法学校
・魔術戦2 グラストン魔法学校
・魔法防衛2 グラストン魔法学校
・精霊学2 グラストン魔法学校
・呪文学2 グラストン魔法学校
───────────────
必要な教科書は全部揃っている。
「お値段1,8000ベリーでございます」
レジの前に行くと宙に数字が浮かび上がっている。まだまだ魔法界には驚かされる…。
そして阿修羅の財布の中身はすっからかんという事にも驚かされる…。
「エ、エル…お金、ないんだけど……」
目をがん開きにして宙に浮く数字を見る。そしてポケットを手探りに触りお金を探す。しかし探し求めるものはない。と言うよりあるはずがない…。
仕方ないだろ…銀行行っていんだから。
どうしよう…、と困った表情をしながらエルの目を見るとコートの内側をごそごそと探っているようだった。コートから手を出し阿修羅が見たのは日本でもよく見たクレジットカードの様な物だ。
「お願いします」
エルはそう言って店員にカードを渡した。
「魔法をお願いします」と店員が言い丸い水晶玉のようなものをエルの前に浮かべた。
エルは何も言わずに杖をそれに向け魔法のような光で覆った。店員はそれを見て水晶玉を消しカードをエルに返した。
「お買い上げありがとうございました〜」
緩い声色で店員は姿を消した。
一瞬で消えたことにド肝を抜かれた阿修羅は口をぽかんと開けて消えたその場所を見入った。
「お、おいエルこれも魔法なのか」
「そうですね。これは魔法と言うよりも魔術と言うべきでしょうか。簡単に言えば瞬間移動です。そんな遠くまでは行けませんが」
あそこを見てください、と言ったエルの指先を辿ってみれば何という事でしょう。さっきの店員が4階の本棚で本を整理しているではありませんか。
阿修羅はその店員の様子をじっと見ていた。
エルはそんな阿修羅を尻目に「次は杖を買いに行きましょう」と言い本屋を先に出た。阿修羅はリュックに本を詰め込み、本屋を後にした。
阿修羅が店を出た途端、目のまえを『ビュンッ』と通り過ぎた。
「悪いなにーちゃん!急いでんだ!」
箒にのった若い人がそう言った。
低空飛行していたその箒はどんどん上に登っていき建物の上をものすごいスピードでかけていった。
早いなぁ…と思って見えなくなるまで見ていると、上空で3本の人の乗った箒がさっきと同じくらいのスピードでかけていった。
3人とも同じような服で箒がピカピカと赤く光っている。
「あれは日本で言う警察と一緒ですよ。今のは恐らくスピード違反ですね」
と阿修羅の心を見透かした様に説明した。
おいおい、魔法は心の中まで読めてしまうのか?とそんな事を思いながらも杖屋に向かうエルについて行った
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