第11話 聖地

「俺たちが行く学校って日本じゃないんだよな?」


家を出てから少し経ち、阿修羅とエルは二人で歩道を歩いている。


「そうですね。イギリスにあります」


「へー、The魔法使いの場所って感じの国だな」


阿修羅は魔法=イギリス、イギリス=魔法という印象を持っていた。


エルは少し頷き阿修羅の目を見た。


「確かに魔法はイギリスが一番栄えていますね。今から私たちが行く魔法学校も世界で有数の名門校です」


「そりゃすげーや」


阿修羅とエルはあたりが真っ赤に染まるまで色々と話しながら歩き続けた。


「着きました」と言って足を止めたエルに阿修羅は?マークが頭についた。


「…なんだここ、なんもないぞ?」


周りに広がるのは、あたり一面が黄緑色の芝生だ。夕日が山の隙間すきまから顔を覗かしている。


エルは阿修羅が戸惑っているのを見ようともせずコートの中から杖を取り出した。


「――隠れた場所よ、現れよ《ヘデン・アペア》」


緑色に光るそれは芝生全体を包み込んだ。

エルが杖を二回上下に振るとバチッ!!と緑色に光っていたそれは弾けて、光の雫となって宙を舞った。


数秒経つと周りを舞っていた光が消えていきあるものが阿修羅の目に写った。


「…なんだこの穴は」


阿修羅の目に映るのは真っ黒な穴。ブラックホールのような物だった。穴の中心はまるで底が見えないような黒で塗り潰されている。外枠は色々な色が混じりあっいて、光がバチバチッと弾けあっている。


「これは魔路まろが開通していない国への校長の救済措置です」


「…魔法って魔術とは違って芸術的だな」


阿修羅の素直な感想だった。圧倒的に阿修羅が今まで習ってきた魔術よりも綺麗だし迫力がある。


「…そうでしょうか」


エルはどっちも同じような物とでも言いたげな表情で言った。


「このタイムホールは時間に制限があります。早く入りましょう、阿修羅」


「あ、ああ」


ド肝を抜かれてまだ収まりきっていない驚きを少しづつ抑えて、阿修羅はこの穴に入った。


その瞬間、阿修羅は足場を無くした。足は動かしている。前に動いているのだが、身体が側転しているかのように回っている。


先に入っていったエルの姿も見えず阿修羅は目がくるくると回る中足を動かし続けた。真っ暗な世界にたまに白い光のようなものが飛んでいく。それについて行こうと足を動かすが動いている気がしない。


前に丸い光が見えてきた。それは段々大きくなっていき次第に阿修羅の見える世界は真っ白な光に飛び込んだ。


霧が晴れるように光はスっと消えていき阿修羅は外に出た。少し前にはブロンドの髪を揺らしているエルがいる。


「…イギリスについたのか?」


初めて見る景色に驚いたわけではない。一瞬で移動した事に驚いたのだ。いや、これは恐いという気持ちなのかもしれない。


「はい、ここがイギリスです」とエルは阿修羅の方に振り返って言った。


阿修羅とエルが着いたのは黄緑色の芝生の上。日本のところとあまり変わり映えのしない場所に到着した。ただ、少し周りを見ると明らかに日本と違う街並みが奥に広がっていた。


エルは街の見える方に歩き始めた。


「行きましょう阿修羅。まずは道具を揃えねばなりません」


フワッと風がふく。故郷とはまた違う匂いの風が。阿修羅は改めて自分が魔法学校に通う事を実感した。














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