第3話いとこのターちゃん。

不思議な夢で25年前の武蔵野に帰ってこれている。


やさしい祖父母と犬のジョンと。


毎日楽しい時間が流れる

そう、優しくて温かい平和な時間。


朝起きてジョンの水を変える当番になった。

なのに3日目には、さぼるようになっていた。


「しずかよ、おいで」


爺ちゃんに庭へ呼ばれた。


「ジョンはいぬなんだよね。

お水が飲みたくても腹が減っても

人間にお願いするっきゃないんだよ。

蛇口は回せないし箱からドッグフードもだせないし。

犬と暮らすってことはね、犬の命を預かるってことなんだよ。」


爺ちゃんは淡々と優しい口調でだけれど

しっかり私の目を見ながら言った。


私はこの迫力というか気迫というか

それにびびったのと

軽々しく水係をさぼった自分にとても腹が立って

悔しくなって。


わんわん泣いた。


「泣いてしまうということは、自分の過ちに

気が付いたんだね?頑張ろうね。」


爺ちゃんは頭をぽんぽんっと撫でた。


私は泣きながらジョンのお水を変えた。

そしてうんちも拾った。


ピンポンが鳴った。


「あら~よくきたね~」


玄関からばあちゃんの嬉しそうな声。


私は走って見に行った。

そこには、小さいころ会ったきりのいとこのターちゃんがいた。


ターちゃんは耳が聞こえない。


中学生になったターちゃんは背も体格も大きかった。

昔は仲よく遊んでいたのに、なんだか少し怖く感じた。


「げんき?」

ターちゃんは独特の話し方で微笑みかけてきた。


うんうんと頷く私。


しかしこれは夢なんだ!


「ターちゃんお話しできるんちゃう?」

私は、そっと話しかけた。


ターちゃんは、うんうんと笑って頷いた。



「きっと僕を不気味だと思う人は沢山いるよ。

こうして特別な力がなくっちゃ話せないし。

だけどしずかとこうして話せて良かったよ。

どうか怖がらないでね。大人になっても怖がらず

話しをしようね。変わらないでね。」



優しく笑いながらターちゃんの言ったこの言葉。


私は、祖父の葬儀の時を思い出した。


大人になったターちゃんにあった時、

ターちゃんは筆談で一生懸命話しかけてくれた。


なのに私は、祖父の他界したショックと疲れと

そして「障がい者」へ対しての接し方に戸惑い


ターちゃんを無視したことを思い出した。


帰る時握手を求められたとき、指先をそっと触っただけの

すごく失礼な態度をとってしまった。



「タ、ターちゃん!!あの時ごめんね・・ごめんなさい。」

私は、うぅうと泣いた。


「いいんだよ。今こうして気づいてくれたから。」


ターちゃんは、手を差し出して私と握手をした。


縁側に座りながら、爺ちゃんが優しくそれを見つめていた。


ばあちゃんは、台所でせっせと朝食の味噌汁を作っていた。


ターちゃんは結婚して3児のお父さんになったんだよね。



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