第4話 守護せしもの 相まみえしは・・1

これは遠い昔の物語

昔も今も人びとは 生きるが為の争いを繰り返す


勝ち戦の中  今度は森の中で残党を追いつめる


「兄者!」「張飛!」「この張飛さまの相手など百年早い!」


しかし相手は思いのほかに強くて 小柄な身体ながら

素早い動きで圧倒している。

隙を見ては相手は 刀をつく、 切り返しては 銀色に輝く刀で引き裂こうとする。


今度は高々とジャンプしてすぐ横にいた相手に向かい

近くまで相手の身体を滑り込ませて、横腹の鎧の継ぎ目に刃を突き刺そうとする。

長くて 黒い髭が揺れた


「関羽様!」「兄者!」

「うっ!」 危うく僅かに身をひき 向きを変えると


今度は 青龍刀を短く持ちかえて その刀を振り下ろす


相手の兜が二つに割れて

ぱらりと長く艶やかな黒髪が宙に舞う 整った美しい女の顔があった!


「女だと!」


その瞳は海のような青・・青い瞳


現世(うつしょ)を 一瞬、忘れる程のこの世ならぬもの

漆黒の髪は揺れ 瞳は輝き、妖しい光を放つ


足元の大地がひび割れポカリと大きな穴があく・・


二人の大将であり伝説たる勇者達に 兵士達を暗い虚無に似た穴が飲み込もうする!

兵士達の悲鳴 「うわああっ」


「兄者!」「張飛!」


ありえない事・・動いている者達の時が止まり

暗い穴に墜ちる事なく 宙に浮く


浮いたままの姿で目を見開き 絶句する 

こちらは兵士と共に時間が止まったような大事な義弟「張飛」

彼に声をかけた

やっとの思いで 言葉を紡いだ(つむいだ)。


「私はささやかな力を持つ者 僅かながらの力で貴方をお守り致します」

柔らかな女の声が聞こえた


乗っていた赤い馬

伝説となる名馬・・赤兎馬


瞳が紅く輝き 緩やかに飴細工の如く形を変える

女の形状に姿を変えて変身する


それも素晴らしく美しい女の姿に


その瞳は紅宝・・紅く燃えたち煌めく


「紅玉姫」と呟く関羽将軍


その身体は 彼女の力で 空に浮いた状態


彼女が肩かけていた 横長の布が

生き物のように絹が触れ合う、心地よい音をたてながら

緩やかに身体に巻きつきそっと大地に身体を下ろす


他の人びとも同じくして 関羽将軍と違っていたのは他の者達が

まるで人形か彫像のように時を止めていた事のみ


「ほんの少しの間だけ 他の方々には時を止めておきました」

微笑む紅玉姫

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