「錆びた鍵」20:24

 その鍵は古びていた。

 錆び付いていて、触れればざらざらとして、やすりかなんかでこすって錆を落とさない限りは使えそうもない家屋の鍵だ。鈍色の平たい持ち手、そのデザインはストライプのはずなのに、錆びて真鱈になっている。

 鍵の紐通しには、黄昏のような暖色の鎖が、これもまた、ところどころ錆び付いていた。

 その錆びた鎖の輪っかが、壊れてひん曲がった金網の一本に引っ掛かっていて、地響きがするたびにちゃらりと音を立てるのだ。

 ある日、地響きが鍵を地面へと揺らし落とした。今度は地面に擦れる音で喚きながら、鍵は少しずつ地面を滑っていく。

 地響きはまだ続く。空の色はいつまでも赤い。建物は瓦礫と化し、人の残骸は風化している。

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