Side Story〈Yuuki〉episodeⅥ

〈Yukimura〉『こんにちは』


 【Teachers】の一員となって迎えた初めての日曜日のお昼過ぎ、今日はゆずちゃんが友達と遊んでくるということで一人時間の空いた私は誰かいるかな、という思いでログインをしました。

 それまでもお休みの日にログインすることはありましたが、誰かに会うためにログインしたのは、今日が初めて。


〈Jack〉『やっほーーーーw』

〈Zero〉『よっ』


 そして私がログインした時にいらっしゃったのはお二方。

 人のことは言えませんけど、お休みの日におでかけをしたりはしないんでしょうか……?


 ちなみに前日の土曜日は活動日ということで、私がそれまで経験したことがなかったコンテンツにたくさん連れて行っていただき、色々な装備を頂きました。

 サービス初期から実装されているドラキュラ伯爵討伐はスキル上げパーティを組んだ際、心優しい方に連れて行ってもらったことはりましたが、1回目の拡張で実装された森林トラ討伐や、2回目の拡張のピラミッド攻略、3回目の拡張の海底遺跡のサメ討伐は初めてだったので、正直内心てんやわんやだったのですが、プレイヤースキルの高い方々のおかげで無事コンテンツクリアをすることが出来たのには感動しました。


 特に今ログインしているお二方は色々アドバイスをくれたり、みんなに指示したりとしていた姿が印象的だったので、きっとLAが大好きな方々なんだと思います。

 もちろんリーダーであるリダさんも指示はされてましたし、先輩プレイヤーであるだいさんも戦闘の時の立ち位置等のアドバイスをくれました。

 ソウルキングさんやかもめさんも、私が遅れていると丁寧に道を教えてくれたりと、助けていただきましたし、皆さん優しい方々だな、というのが昨日の印象です。


〈Yukimura〉『ジャックさんとゼロさんは今日はお休みですか?』

〈Jack〉『そだよーーーーw』

〈Zero〉『俺も今日は休み!春季大会終わったばっかだからなw』

〈Yukimura〉『あ、ゼロさんは何か運動部の顧問なんですか?』

〈Zero〉『おうw俺は女子ソフト部の顧問やってるよ!』


 ほうほう。女子ソフト……ソフトボールってことですかね?

 私は部活動をやってこなかったので、もし先生になって運動部の顧問と言われたら、ちょっと恐ろしいですね……。


〈Zero〉『っていうかさ、さん付けとか敬語とかいらないからw』

〈Jack〉『俺にもいらないよーーーーw』


 むむ。

 ……さん付けや敬語を使わない、ですか……。


〈Yukimura〉『失礼ではない?』

〈Zero〉『固い奴だな!w』

〈Zero〉『俺たちはみんな同じLAのプレイヤーで、大手ギルドみたいな幹部とメンバーみたいな差もないんだしさ、みんな横並びだよw』

〈Jack〉『一応リダはリーダーだけどねーーーーw』

〈Zero〉『それは別の話ってことでw』

〈Zero〉『年齢も顔も分からないけど、みんな同じギルドの仲間なんだから、もっとフランクでいいってw』


 ふむ……。


〈Yukimura〉『了解』


 ……ああ、言ってしまった……。

 さん付けしたり敬語を使う方が楽なんですけど……でも、浮いているとも思われたくないですからね……ただでさえ職業詐称してるんですし……。


 でも、それが普通なんですよね、きっと。

 現実だとなかなか難しいですけど、文字だけなら……。

 ということで私は頑張って、みんなのことを呼び捨てに、敬語も極力使わないことを頑張ると決めました。


〈Zero〉『ゆきむらってストーリーは進めたのか?』


 そう決めていると、不意にゼロさんから私のゲームの進捗具合を尋ねるログが現れました。

 最終的に魔王を討伐するという目的のあるLAには人類と魔族の対立という大きな構図があり、その過程として様々なエリアでのストーリーがあるのですが、このストーリーは拡張データで新エリアが実装されるごとに増えていき、現在は空中都市というところまで展開されています。

 とはいえ空中都市の実装は先月のことで、私はまだそこには行けないといのが現状です。

 海底都市到達までも一人だとなかなか苦労し、たまたま同じ目的の方とご一緒できたおかげで到達できた分、最新の空中都市など夢のまた夢、それが私の感覚でした。


〈Zero〉『海底都市まで行けるのは知ってるけどw』

〈Yukimura〉『新しいのはまだ』

〈Jack〉『空中都市、ほんと綺麗だよーーーーw』

〈Zero〉『うむ。あれは行くべきだw』

〈Yukimura〉『そう、なんですか』

〈Jack〉『あ、また敬語なってるよーーーーw』

〈Yukimura〉『あ。そうなんだ』

〈Zero〉『言い直すとか真面目かwww』


 むぅ。やはりテンポよく会話をしようとすると、敬語になってしまいますね……。

 これは慣れが必要ですね……。


〈Zero〉『じゃ、進めるか!』

〈Jack〉『そだねーーーーw新コンテンツ前までに行けるようにするの大事だし!』

〈Yukimura〉『え、でも二人ともやることは?』

〈Zero〉『俺はさっきスキル上げ終えたとこw』

〈Jack〉『俺も約束は夕方からだからーーーーw』

〈Yukimura〉『元気』

〈Yukimura〉『だね』

〈Jack〉『がんばってるーーーーw』

〈Zero〉『ジャックのサポートあればだいたいの敵も勝てるだろw』

〈Jack〉『まっかせろーーーーw』

〈Zero〉『やばかったら俺のフレンド呼ぶしw』

〈Zero〉『とりあえずストーリー開始早々戦闘あるから、行こうぜw』

〈Yukimura〉『ありがとうございます』

〈Zero〉『5文字多いw』

〈Yukimura〉『ありがとう』

〈Zero〉『よしw』


 そしてゼロさんから、パーティの誘いが送られてきました。

 その誘いを受け私がパーティに入ると、そこにはジャックさんの名前もありました。


 そういえばゼロさんはよくだいさんとパーティを組んでるのを見ますが、今日はだいさんはいないのですかね。

 日曜日ですし、おでかけでしょうか?

 

〈Zero〉『じゃ、行こうぜ!』


 そしてログの色がギルドチャット緑色からパーティチャット青色へ。


〈Yukimura〉『あ』

〈Jack〉『どったのーーーー?』

〈Yukimura〉『どこいけば』

〈Yukimura〉『いい?』


 ストーリー開始となる場所を聞こうとした私は、またしても敬語になりかけたのですが、敬語を打ちそうになったら一旦そこでログを送信し、そのあと続きを打てば敬語にならないということに気づきました。

 これは大発見です。

 慣れるまではこの作戦がいい気がしますね。


〈Zero〉『www』


 でも、なぜか笑われてしまいます。

 むぅ……頑張ってるのに。


〈Zero〉『開始場所はリ・ジェイ海岸だけどw』

〈Jack〉『最寄りまで転移するから、中央都市の掲示板前に来てーーーーw』

〈Yukimura〉『了解』


 なるほど。

 リ・ジェイ海岸は元々実装されたエリアですから、私も転移できるエリアでちょっと安心です。


 ということで、私は私の分身である〈Yukimura〉を動かし、中央都市へ。

 でも現在のスキルキャップである300まで、100以上も下回っている私でお役に立てるかちょっと不安はありますけど、お二方が強い方々なので、なんとかなるのでしょう。

 でも手伝ってくださるって、嬉しいですね。これがギルドに入ったからだとすれば、ギルドに入ったのは正解、だったかな?


 そして私を誘うように提案してくれたお二方は、きっと現実でも優しい先生なのかなって、そんなことを思ったりしながら、私はお二方が待つ中央都市へと向かうのでした。







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以下作者の声によるあとがきです。

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 久々の更新となりました。

 お待たせしすぎてごめんなさい!


 オフ会前で会う前の会話はよそよそしい感じがあり、本編とのギャップが書いてて楽しいです。

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