Side Story〈Yuuki〉episodeⅣ
そして週末土曜日。
さあやん>神宮寺優姫『まも大宮!』11:57
神宮寺優姫>さあやん『みどりの窓口前にいます』11:57
さあやん>神宮寺優姫『おっけ!』11:58
紗彩ちゃんを迎えにいくべく、私はゆずちゃんと一緒に大宮駅へとやってきました。
この後の買い物も考えて、車はヨコバシカメラの駐車場に。
免許取得以来の運転に、少しだけ緊張したのは秘密です。
そして12時を少し回った頃。
「やっほー!」
「こんにちは」
「はじめましてっ」
「おっ、妹ちゃんかー。優姫に似て可愛いねっ」
「柚姫ですっ。いつもお姉ちゃんがお世話になってますっ」
紗彩ちゃんと合流するや、ゆずちゃんはしっかりとご挨拶できていました。可愛いと言われて、少し嬉しそうかな?
「でもあれかな? 中身はけっこう違うっぽいねっ」
そう言って紗彩ちゃんは笑ってましたけど、たしかにゆずちゃんは私より無邪気ですけど、そこは私にはお姉ちゃんという立場があるので、しょうがないですよね。
「じゃ、まずはお昼食べよっか!」
「そうですね。ゆずちゃん何か食べたいのある?」
「パスタっ」
「おー、いいねっ。なんでもいいって言わないのは偉いぞー」
「パスタ屋さんなら駅ビルのレストランフロアにありますし、行きましょうか」
「おうっ。腹が減っては戦はできぬだー。行こうっ」
「おーっ」
出会ってすぐだというのに、紗彩ちゃんとゆずちゃんは早くも意気投合というような雰囲気で。
私たちは3人揃って、まずはお昼ご飯を食べに移動するのでした。
☆
そして昼食の時。
「でね、まとめると、大人数が同時に仮想世界で一緒に遊ぶってのが、MMOなんだよ」
「ふむふむ」
「細かいゲームの仕様なんかは、やって覚えた方が早いと思うけど、ゆずちゃんやってみたくなった?」
「はいっ! お友達もやってますし、やりたいですっ」
「そうかそうか、じゃあ紗彩ちゃんがゲームを始めるためのお手伝いをしてあげようっ」
「ありがとうございますっ」
分かりやすくLAについて教えてくれた紗彩ちゃんは、まるで先生のようでした。
元々色んなゲームを教えてくれる時も、分かりやすく、興味を引くように話してくれた紗彩ちゃん。私に合わせて教職の講義も受けてくれてますけど、元々その道も合ってたのかもしれませんね。
紗彩ちゃんの話を聞いてすっかりやる気になってるゆずちゃんを微笑ましく思いながら、私たちは昼食を食べ終え、さっそくパソコンなど必要なものを買いにヨコバシカメラへと移動するのでした。
☆
そして13時頃。
「予算はー?」
「ええと、私が学校で使ってるのでも、大丈夫ですよね?」
「大丈夫というか、余裕すぎ。優姫のパソコンスペック高いもん」
「あ、そうだったんですか? お父さんが買ってくれたものなんですけど……」
「いいお父さんだねー。でも、同じくらいの買うとなると、けっこう高くついちゃうよー?」
「じゃあ、詳しくないので、紗彩ちゃんのおすすめでお願いできますか?」
「ほうほう。任せろっ」
パソコンのコーナーに来た私たちでしたが、ずらっと並ぶパソコンに、私もゆずちゃんもどうしていいかわからず、完全に紗彩ちゃん頼みとなりました。
ほんとに、いてくれてよかったです。
「ありがとうございます」
「ありがとうございますっ」
「おうよー。紗彩ちゃんにまっかせとけーっ」
でもパソコンを選び出した紗彩ちゃんは楽しそうで。
すっかりゆずちゃんも懐いていますし、3人での買い物の時間は、楽しく過ごすことができました。
☆
そして15時を回った頃。
「よしっ、じゃああとは帰って準備だーっ!」
「おーっ!」
「何から何まで、ありがとうございますね」
「いいっていいって! 優姫んち行けるのも、楽しみだったしさっ」
「ゆっくりしていってくださいね」
「くださいねっ」
私とゆずちゃんがLAを開始するのに必要なものを買い揃えて、3人で手分けして荷物を持ち、駐車場へ。
ついに友達を乗せて運転をするときが来ました。
ちょっとだけ、ドキドキです。
「おー、すごいな、ほんとに優姫が運転するんだっ」
「父の車ですけど、好きに使っていいと言われてますので」
「お姉ちゃん気を付けてねっ」
私は運転席に座り、助手席にはゆずちゃん、後部座席には紗彩ちゃんが座ります。
今は紗彩ちゃんも乗っている分、少し緊張しますけど。
☆
緊張こそしたものの、安全運転を意識し、私たちは問題なく家に帰ることができました。
「おー、おっきなおうちだー」
「普通、だと思いますけど?」
「ほら、いまうち1Kだし?」
一軒家の我が家を見て、紗彩はそう言って笑ってました。
たしかに一人暮らしの紗彩ちゃんのお家からすれば、倍どころではないと思いますけど。
それでも一般的な二階建ての一軒家には違いありません。
「よしっ、じゃあさっそく準備だーっ!」
「おーっ!」
紗彩ちゃんの言葉に応えて、ゆずちゃんも元気いっぱい。
とはいえ、LAスタートのための準備はほとんど全て紗彩ちゃんが一人でやってくれて、私たちは見ているだけでした。
そして。
「おっけい! じゃあ、ログインしてみよ!」
セットアップが終わって、食事用のテーブルを囲んで座る私たちの前には、3台のPCが並んでいます。
左から私、真ん中に紗彩ちゃん、右にゆずちゃんのPCです。
それぞれコントローラを握り、少しわくわくした気持ち。
やはり、初めての体験はわくわくしますよね。
「わっ、画面きれー!」
そして始まったゲームのオープニングムービーに、ゆずちゃんはさっそく大興奮。
綺麗な世界の中で、剣や盾を持った色々な種族の人たちがモンスターと戦い、魔法を放つムービーは映画さながらのようでした。
「あたしもログインは久々だなー」
既にオープニングムービーを見たことがある紗彩ちゃんだけは、ムービーを見入る私とゆずちゃんより一足先に画面を進めていっているようです。
「こんな感じで、自分の好きなキャラ作れるんだよー」
ムービーを見終わった私たちへ紗彩ちゃんが示してくれたのは、紗彩ちゃんが使っているキャラクターだったのでしょう。
そこにいたのは紗彩ちゃんが好きだと言っている、織田信長のキャラクターに似せて作られたキャラクターでした。
キャラクターの上には〈Nobu〉と書いてますね。
「〈Nobunaga〉にしようと思ったんだけどさー、使われてたみたいで、はじかれちゃったから」
「あ、名前は他の人と一緒にはできないんですか?」
「うんー。だから候補は何個か用意しとくといいよー。始めたら変えられないからねっ」
「ふむふむ」
紗彩ちゃんのアドバイスを受けながら、私とゆずちゃんもキャラクターメイクをスタート。さっきからゆずちゃんが静かになっているので、きっと集中しているのでしょう。
私は、紗彩ちゃんを真似て私のお気に入りの真田幸村を意識してキャラクターを作ってみました。髪の毛の色は、完全に真似するのに少し抵抗があったので、オリジナル要素を出して赤くしてみましたけど。
「おっ、優姫のキャラワイルドでカッコいいねっ」
「あとは名前、ですよね」
「さすがに〈Yukimura〉は使われてる気がするけどねー。あ、ゆずちゃんも可愛くできたねっ」
「はいっ」
私が名前を入力し、決定ボタンを押しつつ、ゆずちゃんの画面を覗くと、そこには可愛らしいお顔で、犬のような耳がついた女の子のキャラクターが映っていました。
種族的には、獣人というやつでしょうか。
種族が違うとスタート地点違うよって言われたからヒュームにしようね、って話してたのに……可愛さに勝てなかったのかな?
「えっ、待って優姫! その名前通ったの!?」
「はい?」
ゆずちゃんの画面に気を取られていると、決定ボタンを押したまま、私の画面はゲームが進行し、ホームタウンの紹介ムービーへと切り替わっていました。その状態に紗彩ちゃんは驚いた様子。
名前を再入力しなくていいということは、これで決定ということでいいのでしょうか……?
「ちょうどよく使ってた人が辞めたりしてたのかなー? すごいね、びっくりだ」
「ふむふむ」
こうして私のキャラクターは〈Yukimura〉という名前に決まり、ゆずちゃんは〈Yuzu〉が通らなかったので、〈
「よし、じゃあキャラのプロフィール情報出してー」
そして二人とも最初のムービーが終わった頃、紗彩ちゃんから次の指示が出ます。
「スタートのサーバーってランダムなんだよねー。サーバー番号なんて書いてるー?」
サーバーが違うと一緒に遊べないのは、既に紗彩ちゃんから聞いていましたけど……ええと、私は。
「01って書いてます」
「ゆずは32って書いてるよー」
「わーお、優姫はもってるなー。01サーバーは1番人気のサーバーだよっ」
「え、でもそれだとゆずちゃんと一緒にできませんよね?」
私とゆずちゃんのサーバーが違ったことで、少ししょんぼりした様子のゆずちゃん。
「いやぁ、言ったじゃん。優姫もってるなー、って」
「え?」
「ゆずちゃんは、あたしとチェンジしてあげようっ」
「えっ、紗彩ちゃんお姉ちゃんと同じとこなんですか?」
「ま、元々古株プレイヤーだったからねー。でもLA以外にもやりたいゲームいっぱいあるし、これから遊ぶ二人のためなら問題なしっ」
「えっ、いいんですかっ? 紗彩ちゃんありがとうっ」
紗彩ちゃんの好意に、抱き着いて喜ぶゆずちゃん。
今考えると、色々と幸運が重なったスタートだったなぁと思います。
紗彩ちゃんがいなかったら、そもそもスタートできたかもあやしいですし。
「ま、ゆずちゃんがサーバーうつっても、スタート地点は二人別のままだからさ、優姫はとりあえず色々街の中動いてみなよっ」
「わかりました」
紗彩ちゃんに言われるがままにゆずちゃんはサーバー移転用の神殿とやらに移動する間、私はとりあえずキャラクターを動かして、街中を走ってみました。
街中には私と同じようにキャラクターの上に名前が出ている人がたくさんいて、本当に知らない人も同じ世界で動いているんだと、実感できます。
時折現れるログも意味はわかりませんが、それは明らかにNPCではなく、プレイヤーが発しているものでしたし。
オンラインゲームって、すごいな、と私はただただ驚くばかり。
「じゃ、最初の目標は二人の合流だね!」
その後移転が終わったゆずちゃんと私は、紗彩ちゃんの手ほどきを受けながら、合流という目的を果たすためにそれぞれ別なエリアで
まだまだ右も左も分からない状態ではありますが、こうして私のLA生活は、スタートしたのでした。
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以下
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ギルド加入ならず……!
更新遅くてごめんなさい…!
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