Side Story〈Airi〉episode Ⅺ

本話は、本編18話の話になります。

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「じゃ、スタンバってくるであります!」

「おう! ゼロやんっぽいのが来たらあたしも行くぜ!」

「でも男の人に声かけられるの、ちょっと怖いな~」

「大丈夫だって。ピンチなったら首を振れば、あたしが助けにいくさ」

「……ぴょんはかっこいいなぁ」

「女に言う言葉じゃねーって。ほら、じゃあスタンバイよろしく!」

「おっけ~」


 スラーバックスを出て、あたしたちはゼロやんと合流するためにサンデイズの方に移動する。


 10時49分、ゆめがサンデイズ前に立ち、あたしは改札から見えないところでスタンバイ完了。

 ああ、サプライズ前ってのはワクワクしていいなぁ!


 ちらちらとこっちに視線を送るゆめに笑顔を見せつつターゲットの登場を待ってると、ゆめの表情が少し不安の色に変化した。

 む、事件か!?


 あたしが少し身構えると、ゆめの前にベージュのチノパンに白無地のロンT、その上に紺のコットンシャツを羽織った男が現れた。

 背はそこまで高くないけど、耳が隠れないくらいの長さの黒髪で、なんというか割と細身なその後ろ姿からは爽やか系な感じが伝わってくる。


 ゆめとなんか話してる感じだけど、こいつがゼロやんか?


 もう少し様子を伺ってると、ゆめが笑顔を見せた。

 あ、よかった、変なやつじゃないみたい。

 というか、ゆめけっこういい顔なったな!

 顔で元カレ選んだゆめが笑顔見せるってことは、これはガチでイケメンかー?


 よっしゃ、あたしも出陣じゃ!

 

 期待を胸にそろりそろりと近づくあたし。

 距離を縮めるにつれ、少しずつ二人の会話も聞こえてくる。


「わたしがゆめでーすっ」

「無事会えてよかったわー。って、なんで近づいてくるの、俺とぴょんか迷ったりしなかったの?」


 わーお、なんといういい発言。

 ちなみにこの段階であたしとゆめは既にアイコンタクト済。


「え~、だって」


 にこっとゆめが笑った。

 

 今だな!


「やっほう! あたしがぴょんだよーんっ」

「えっ!?」


 背後からいきなり肩を掴んで正体を明かす。

 あたしの方に振り返った男は、目を白黒させてそりゃもうびっくりした顔をしていた。

 やったね、サプライズ大成功!


 でも、サプライズを受けたのはゼロやんだけじゃなかったんだけどね!


「……ゼロやん、気づいてなかったの?」

「……え?」


 あたしの顔を見ていたゼロやんが、ゆめの問いかけに視線をゆめに戻す。

 ゼロやんが間抜けな声を出してたけど、あたしは追撃の言葉を出せなかった。

 

 ゆめの方向いてくれてよかった。

 

 ちょっと顔を赤くしてしまってなかったか不安だったから。

 声出したら、ちょっと噛みそうだったから。


 カッコいいか可愛いかでいったら可愛い系の顔立ち。

 髪は短めで爽やかさな感じ。

 ゆめと同じくいいバランスの二重に、優しそうな目。テレビで見る俳優とかアイドルとかってほどじゃないけど、全体的に顔立ちは整ってて、なんというか大人数のアイドルグループとか読モとかにいそうな感じだった。

 ほんと、LA内の〈Zero〉に似てる。


 ゲーマーのくせに日焼けしてるあたりも、正直あたしからすると好感度が高い。

 左手首だけ割と白いってことは、こいつ野球部の顧問なのかな?


 セシルの元カレって話も、まぁなくはないだろうなって思った。


 大学内でいたら、間違いなくモテる方。

 教師だったら女子生徒から人気が出るタイプ。


 総合評価はイケメンでOK。


 正直、見た目だけならけっこうタイプ。

 

 ああもう、こんな風に思うつもりなかったのに!


 争奪戦……かー。

 うーん、言霊ってのは本当にあるのかもしれないな。


 ゆめが彼氏と別れてなかったら。

 だいがゼロやんのこと好きそうじゃなかったら。


 一目惚れってほどじゃないけど、ちょっと狙いたくなるような。

 初めて会ったゼロやんは、そんな男だった。

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