第24話 白い輝き

ハルトは冒険者ギルド1階に併設された食堂から、裏の解体所に近いドアを開けた。


そこはギルド横の外に繋がる出入口。食堂へ直接入る為のドアだ。


そして、4人の男がニヤニヤ笑って待ち伏せしていた。


「ハルトォ! さっきは言いたい事を言ってくれたなぁ。」


「ん? リステーだっけ? 何の用だ?」


「リステーだぁ! 口の利き方に気を付けろよぉ! ひよっこがぁ!」


「で? そのリステーサマ・・が何の用だ?」


「先輩に対する口のきき方を、新入りに教えてやるのさぁ! 身体になぁ! そして『ポーターとして使って下さい』って、泣いてお願いするんだよぉ!」


リステーの隣にいた男セビ(フルネームはセビ・ゴノミ)が会話に割り込んで来た。


「まあ、待て、良い槍を持ってるじゃないか、その槍をくれれば許してやらなくもないぞ」


因みに後2人の名前はルポン(フルネームはルポン・パドウ)とドリトル(フルネームはドリトル・マーメイ)で、リステー、セビ、ルポン、ドリトルの4人は、冒険者パーティー『白の輝き』として活動している。


白の輝きは万年Cランクでうだつが上がらないパーティーだ。


「ふーん。持ってみるか?」

ハルトはゲイ・ボルグを、さりげなくセビに放り投げた。


ドスン!!

バキッ!

「ぐあっ!!」


セビは片手でゲイ・ボルグを受け取ろうとしたが、ゲイ・ボルグは加重の機能で凄く重くなり、受け取ろうとしたセビの右手首は骨折した。


ドスン!!


ゲイ・ボルグはそのまま地面に落ちて、地面にめり込む。


「あう! いてててて……」


右手首を押さえてのたうつセビ。


「おう! なんてこったい! こいつヤバいぜ。」

「ま、不味いんじゃねぇか?」


ルポンとドリトルは不安そうな顔で、リステーに尋ねる。


リステーはまだ納得してない。

「ふん、どうせ怪力だけのひよっこだ。先輩の実力を見せてやる。」


リステーは剣を抜き、剣の振りかぶる。

「これでも喰らえええええ!」


ハルトはゲイ・ボルグを召喚し、石突きを前にして構えていた。


剣の腹を袈裟斬り振り下ろすリステー。


ドガッ!!


しかし、槍は最短距離を進み、カウンターでリステーの金属の胸当てに直撃した。突き飛ばされて、もんどり打つリステー。


リステーは白目をむいて、口から泡を吹き気絶していた。しかもリステーの金属の胸当ては穴があいていた。


「先輩、礼儀を教えてくれるんだって?」


ハルトはルポンとドリトルを見て、不敵な笑みを浮かべた。


「いやいやいやいや、俺は付き添っただけで、関係ねぇし」


ルポンは両手の平を広げて横に振り、戦う気が無い事をアピールした。


「俺も、関係ねぇ。許してくれ」

ドリトルも首を振って戦う意思無い事を告げる。


「はぁ、そこの2人を連れて、とっとと何処かへ行ってくれ」


「お、おう。済まねぇ」

「見逃してくれてありがとう」


ルポンとドリトルはリステーとセビを連れて、ヨタヨタしながら離れていった。


リステーとセビの怪我により、白い輝きは暫くの間、冒険者活動を停止せざるを得なくなるのあった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

【ドーマンサイド】


ギーベル王国はドーマン王国と名前を変えた。そのドーマン王国の王城の一室。


「この国の政治は白澤に任せるぞ」

ドーマンは白澤に告げた。


「承知しました。ドーマン様は如何されますか?」


「この世界の事を知っておく必要があるだろう。現場で直接見聞きする事は大事だ。ドーマン王国が安定するまでの間、ドンギューを連れて他国へ行ってみよう」


「え? 私ですか?」

寝耳に水のドンギューは驚く。


「この世界に詳しいのは、お前以外に誰がいる?」


「は、はぁ」


「さぁ、行くぞ! 手始めにダオラン王国だ!」


ダオラン王国もスフラン王国とツドイ帝国に挟まれた小国で、ドーマン王国の北にある。


ドーマンとドンギューはダオラン王国に向かうのあった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る