姉とぼくはみすぼらしい部屋着を着ていたので、いそいそと着替え、隣近所へと繰り出した。澄んだ空気の流れる夕方のことだ。

 木々が風で靡いていた。こんなに強い風が、良い天気だと思ってたのに吹くものなのかな。夕方だったので赤から青へのグラデーションの空の色、それを下地に横切る雲が細くなって天球をいくつも走っていてきれい、この風は雨を運んでこない、でもぼくのシャツの端とか、姉の髪の毛とか、風の力を強く感じた、ぼくらの勢いは風に乗っていた。最強のぼくらはこのまま飛んでいきたかったがさすがにそうはいかなかった。地面を這う虫の二匹だったから。

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