第6話 あぁ、そっちは18禁だから

「ライフルなのに、……爆発、する、の?」

 仰向けに倒れた俺の目の前には、超至近距離でマニィさんの顔。俺に覆い被さって庇ってくれたのか。間近で見ても一切の破綻無し。超美形だ。

 ――俺はマニィさんが身体はって助けるような、そこまで価値の有る人間じゃ無いよ。


 ただ、こんなに顔色、悪かったっけ?


「武器に、詳しい感じ、なの? そだね、なんでもたいがい、仕込めちゃうよ。人間用とはサイズがちがっ、……つぅ。違う、デカいから。ね。……く、つっ。……ラギ君は歳、いくつ? 私は、一七」

 見た目から行けば全然意外じゃないけれど。あれだけエラくて俺より二コ上なだけ?

「お、俺は一五だけど……」



「……意外と、オトナっぽい。んだね」

 マニィさんはそう言って真っ青になった顔で微笑むが。


 ――ポツ、ポツ……。なんの音だろう?


 マニィさんの制服の左腕、二の腕に大きな何かの破片が突き刺さり、その下は真っ赤な制服がどす黒くなって。

 刺さった破片から赤い液体がしたたり、小さな音を立てて地面に落ち、砂を赤く染めながら吸い込まれていた。


「マニィさん! 腕に! ……血が!!」

「私にも赤い血が流れてんの、確認出来たよ。良かったわ。はは……。改めて見たら。可愛い顔、してるね……、ラギ君」

 

 マニィさんは、土気色の顔のまま笑いながら立ち上がるが。左手が動きに着いていっていない。

「え、マニィさん。左手、左手が……」

「くっついてるだけラッキー、でしょ。ラギ君も立って? ……ちっ。全滅、か」 


 爆発のあった方向に目をやると多少凹んだ14と書かれたコンテナと、そして“パーツ”ごとにバラバラになった、もと人だったものの残骸。

「あぁ、そっちは18禁だから、見ちゃダメ。だよ」

 ……自分だって一七って言ったじゃ無いか。


「良ぃい? うん。へへ……。ラギ君は、こっち見て。私だけを見てて。ね? ――お。やっと、装脚戦車が来た。……くっ、逃げる準備しよう。……走れる?」


 BAの技術を積み上げる途中で作られた足の付いた戦車。それが四輌、六本の足で“走って”くる。

 多少まぬけにも見える見た目に反して、最高速は通常の戦車と同等、機動性なんかはそもそも勝負にならないらしい。

 それでも相手がBAでは分が悪いが、数が揃えば対抗はできる。

 事実、マニィさんにオストリッチ。と呼ばれた機体は後退を始める。


「アールブは、来ないの?」

 新共和の誇る切り札。性能としては連邦のそれを凌駕するBA、アールブ。

 さっきのやり取りを聞く限り、まだ出られないのか?

「これないみたい、だね。だけど、これで時間は稼げる。――お、意外と普通に立てた。左腕以外は、つっ……。何とかなる、か。さて。どこに逃げよう」


「船には……」

 ――あ、機密事項があって俺が居るから入れない、とか。

「無い無い。民間人の救助を拒否するとか、そこまでの機密なんか、今のあの船には。無いよ。今は、ね。……戦闘態勢フェーズ5が出ているから、だから入り口、閉鎖されちゃってるだけ。――ふむ、良し。ならばコンテナに、行こ」


 ――気合いだ、うりゃあっ! そう言うと背筋が伸びる。

 ……見た目に反して意外と脳筋? まぁそう言う意味では軍人だし。


「ちょっとぉ! 大丈夫なんですか!?」

「頑丈なのがウリなのよ、私もコンテナも。――直撃してもほぼ無傷だったでしょ? 両方。へへ……」

 さっきのコンテナには多分二発、直撃したはず。

 だけれど見た目はちょっと凹んだだけ。確かに頑丈そうではある。



「事態がこうも混迷したら、もう護る対象と一緒いるのが一番良い! 行くよ!」

「でも、そんな簡単に入れんですか?」

「もちろん。ロックの責任者は私。パスも知ってるし物理キィも持ってるから」



 オストリッチが退いた間に、二人で“12”と書かれたコンテナへと駆け込む。

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