使い倒したスーパーカブの修理を頼まれた話
京丁椎
プロローグ
滋賀県と言えば琵琶湖が思い浮かぶだろう。バイクでツーリングに出かける方も多いと思う。ツーリングの名所だ。そんな琵琶湖に面したT市A町。ツーリングのメッカだが地元住民はそれ程バイクに興味が無い。そんな街だ。
始まりはある一冊の本を注文した事だった。
「へ~、スーパーカブの小説がありますんや。僕が使ってるカブと一緒ですなぁ」
私の行きつけの本屋は配達がメインの商売をしている。以前は息子や娘が店番をしていたが、就職したり嫁いだりして今ではおっちゃん一人で経営している。そんな店なのでおっちゃんが配達に出ている間は店が閉まっている。店を開けていようにも人を雇えば利益が出ないからだ。
「実物を弄って夜はコレを読んでから寝る。休日はバイク尽くしやで」
体を壊して仕事を辞めた頃に始めたバイク弄り。自動車整備士時代から使う工具にホンダ横型エンジンを修理するための特殊工具が加わり現在に至る私。今ではメーカーが採用しなかった組み合わせでオートバイのエンジンを組み立てたり、部品を集めてオートバイを一台丸ごと組み立てたりするまでになった。
まぁ『オートバイ』と言っても『ホンダ横型エンジン搭載車種』限定。要するにモンキーやゴリラなどの『4mini』やシリーズ累計一億台の『スーパーカブ』だ。
「自分で直せるって良いなぁ、京君、バイク屋始めなはれ」
「仕事や無いから楽しゅうてやってられるんやで」
基本的にスーパーカブ限定だが、スクーターの修理をしない事も無い。
「カドカワの『スーパーカブ』やね、注文しときます。へ~京君はバイクも直すんや、僕のカブも診て欲しいなぁ……このへんはバイク屋が無いさかいなぁ……」
本屋の軒先には使い込んだスーパーカブが停めてある。タイヤは丸坊主、チェーンカバーはオイルで真っ黒。エンジンの軸と言う軸からオイルが滲んで砂埃がまとわりついている。
「もう八万キロも乗ってるし、あちこちガタが来てるんやけど買い換えるのは厳しいしなぁ、中古のカブも高いしなぁ……」
その数ヶ月後、本屋のおっちゃんのカブはガラガラと悲鳴を上げる様になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます